「ナショナル・コントラクト・ソーイング・マンス」——アメリカが讃える、縫い手たちの技術と誇り
7月1日から、アメリカでは「National Contract Sewing Month(ナショナル・コントラクト・ソーイング・マンス/国内受託縫製月間)」が始まりました。日本ではあまり耳にしない言葉かもしれませんが、これは日々ミシンに向き合い、ブランドやデザイナーの想いを一着の服、一つの生活雑貨へと形にしていく、名もなき職人たちを讃えるための特別な1ヶ月です。SNS上では今、#NationalContractSewingMonth というハッシュタグとともに、工場の様子や職人技を紹介する投稿が増えているのだそうです。今回は、この記念月間が生まれた背景と、その先にある「縫うこと」の価値について、少し掘り下げてみたいと思います。
「コントラクト・ソーイング」とは、どんな仕事なのでしょうか
「コントラクト・ソーイング(contract sewing)」とは、ブランドやデザイナーから縫製工程だけを請け負う、いわば裏方の仕事です。デザイナーが描いたパターンやサンプルを、実際に着られる・使える製品として量産するのは、ほとんどの場合こうした専門の縫製会社や職人たちです。アパレル業界のデザイナーの多くは自身でミシンを踏むわけではなく、サンプル縫製も外部に委託することが多いといわれています。
求められるのは、単に「縫えること」だけではありません。裁断の正確さ、検品の目、そして納期通りに大量生産をやり遂げるための段取り力まで、あらゆる技術が組み合わさって初めて成り立つ仕事です。
“Assembling goods requires intricacy and skill.”
(製品を組み立てるには、繊細さと高度な技術が求められます。)
はじまりは、カリフォルニアの小さな縫製工場から
この月間の始まりは2019年。カリフォルニア州ガーデングローブに拠点を置く縫製会社「CustomFab USA」が発案し、業界団体National Day Calendarによって正式に7月の記念月間として認定されました。CustomFab USA自体は1990年、たった1台のミシンと超音波溶着機からスタートした会社なのだそうです。そこから、アメリカ製にこだわるソフトグッズ製造の主要企業へと成長し、現在では350人を超えるスタッフを抱えるまでになったといいます。
業界団体との結びつき
CustomFab USAは、特殊繊維業界の団体である「Industrial Fabrics Association International(IFAI)」のMakers Division(縫製職人部門)にも名を連ねており、そうしたつながりを通じて、この記念月間はアメリカ国内の縫製業界全体に広がっていったようです。国内生産にこだわることで健全なサプライチェーンを守り、経済の下支えにもなる——そんな思いが、月間創設の根底にあったといわれています。
ファッションから医療現場まで——縫い目が支える暮らし
コントラクト・ソーイングが手がける製品の幅は、想像以上に広いものです。衣料品はもちろん、カーテンやクッションといったインテリア用品、シートベルトや救急用バッグ、医療機器や整形外科用の装具、さらには軍需・タクティカルギアまで——身の回りのあらゆる「布でできたもの」に、こうした職人たちの手が関わっているといわれています。
この月間で讃えられるのは、ミシンを操る縫製技術者だけではありません。裁断士、検品担当者、機械のメンテナンスを担う技術者、品質管理の専門家、そして生産全体を組み立てるデザイナーやソーシング担当者まで、製品が完成に至るすべての工程に関わる人々が対象なのだそうです。
“…the cut and sew geniuses who make up ‘the fabric’ of our industry.”
(……そして、私たちの業界という”布地”を織りなす、裁断と縫製の天才たちへ。)

SNSで広がる、職人たちの物語
この月間では、#NationalContractSewingMonth や #ContractSewingMonth といったハッシュタグを使い、普段は表に出ることのない縫製工場の様子や、職人一人ひとりのストーリーを発信する動きが広がっているそうです。近隣の縫製工場を訪ねてみる、SNSで尊敬する職人や工場を写真や短いインタビューで紹介する、小規模な縫製会社から直接商品を購入して応援する——そんな形で、この月間に参加する人が増えているといわれています。
ふだん私たちが何気なく袖を通す服や、ソファにかけているブランケットも、その裏側には必ず、こうした技術と手間の積み重ねがあります。「誰がこれを縫ったのだろう」と想像してみることも、この月間らしい過ごし方のひとつなのかもしれません。
まとめ——「縫うこと」への敬意を、生地選びにも
ナショナル・コントラクト・ソーイング・マンスが讃えているのは、大量生産の現場で働く職人たちですが、その根底にある「一枚の生地を、丁寧に、意味のあるものに仕立てていく」という姿勢は、ご自宅でハンドメイドを楽しまれる皆さまの手仕事にも、どこか通じるものがあるのではないでしょうか。工場でも、ご家庭のミシンの上でも、生地と向き合う時間には、同じように技術と愛情が込められているのだと思います。
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