Make it British とは?イギリスの縫製業を守る草の根の力

Shop Manager
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大量消費ではなく、作り手の技術と時間に見合った対価を払い、長く使えるものを選ぶ。「持続可能」をもっと意識しなければいけないと思います。

イギリスの縫製業を守る草の根の力 ― 「Make it British」が伝える英国製アパレルの物語

イギリスには、国内に残るわずかな縫製工場やテーラー(仕立て職人)の存在を、SNSを通じて発信し続けているひとつのプラットフォームがあります。その名は「Make it British(メイク・イット・ブリティッシュ)」。今回は、この草の根の活動がどのように生まれ、どのようなかたちでイギリス国内のアパレル・縫製業を支えているのかを、実際に調べた内容をもとにご紹介します。


Make it Britishとは何か

Make it Britishは、元ファッションバイヤー兼デザイナーのケイト・ヒルズ氏が2011年に立ち上げたプラットフォームです。ヒルズ氏はバーバリーやマークス&スペンサー、リーバイスといった大手ブランドで約20年にわたりデザイナー・バイヤーとして働いていましたが、その過程で仕入れ先の生産拠点が次々と海外へ移っていく現実に直面します。「このままではイギリスから縫製の技術そのものが失われてしまう」という危機感から独立し、当時まだ国内に数多く残っていた工場や職人たちを掘り起こし、光を当てる活動を始めたのがMake it Britishの原点です。

イギリスの縫製・アパレル製造業は、1970年代にはおよそ90万人もの雇用を抱えていましたが、20世紀末までにその数は85%も減少したと伝えられています。高級品の大量生産は海外に移り、より安価な労働力と豊富な熟練労働者を求めて生産拠点が国外へシフトしていったことが、その背景にあるとされています。Make it Britishは、こうして「もう存在しない」と思われがちなイギリスの縫製業を、ブログやSNS、ディレクトリサイトを通じて可視化する役割を担ってきました。

ハイストリートの仕事には、次第に幻滅していったといいます。すべての調達が海外に移り、価格は上がり続け、長期的には持続可能なやり方ではないと感じたそうです。


— ケイト・ヒルズ(Make it British創設者)The Manufacturer誌インタビューより

現在、Make it BritishのInstagram(@makeitbritish)のフォロワー数はおよそ4万5千人です。数十万人規模の巨大アカウントというわけではありませんが、英国製ブランドと縫製工場・職人をつなぐ業界内での存在感は大きく、ポッドキャストやニュースレター、会員制のディレクトリサービスなどを通じて、熱量の高いコミュニティを築いています。

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一年を通じた活動 ― 「Made in UK Day」という象徴的な一日

Make it Britishが毎年主導している象徴的な一日として存在するのが、「Made in UK Day(メイド・イン・UKデー)」です。

毎年3月9日に開催されるこの日は、ヒルズ氏がMake it Britishを設立した2011年3月9日にちなんでいます。この日はSNS上で#MadeInUKDayや#MakeItBritishのハッシュタグを使い、自分が持っている英国製の製品を紹介したり、洋服のタグを確認する習慣をつけたりすることが呼びかけられています。地域に残る工場や工房を検索して、工場見学やファクトリーショップを訪ねてみることも提案されており、消費者が「作り手の顔が見える買い物」を実践するきっかけとなる一日です。

トレードショー「Meet the Manufacturer」/「Make it British Live!」

Make it Britishはまた、2014年から「Meet the Manufacturer」という展示会・カンファレンスをロンドンで開催しています(現在は「Make it British Live!」に改称)。バイヤーとメーカーの間に大きな断絶があると感じたヒルズ氏が、両者を直接つなぐ場として立ち上げたイベントで、毎年春(例年5月頃)にロンドンのオールド・トルーマン・ブルワリーで開催されてきました。会場では熟練の裁断師や縫製工が実際にその場でガーメントを仕立てる「Sewing Studio」という実演コーナーが人気を集め、デザイナーやメーカーが一堂に会する場となっています。

ポッドキャストと「British Brand Accelerator」

毎週配信されている「Make it British Podcast」では、ヒルズ氏自らが英国製ブランドやメーカーの舞台裏を紹介し、国内で生産を行うための実践的なヒントを発信しています。さらに近年は、英国製ブランドの成長を後押しする有料プログラム「British Brand Accelerator」も展開しており、単なる情報発信にとどまらず、実際にビジネスとして英国製造を軌道に乗せるための伴走支援にまで活動の幅を広げています。

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エシカルファッションとの結びつき

Make it Britishが一貫して発信しているメッセージは、ご質問にあった通り「安い海外製を大量消費するのではなく、質の良いものを適正価格で買おう」という考え方です。ヒルズ氏はインタビューの中で、若いデザイナーが縫製に2時間かかるドレスを工場にわずか10ポンドで依頼しようとする例を挙げ、最低賃金を考えれば、その価格で工場が倫理的に対応することがいかに難しいかを説明しています。安さの裏側にある労働条件への想像力を持つことこそが、エシカルな消費の第一歩だという姿勢です。

一方で、ヒルズ氏は単純な「ユニオンジャックを振るだけ」の愛国心には距離を置いています。国内メーカーの中にも労働環境に課題を抱える工場は存在するとして、大手小売に対しては仕入れ先の透明性を高めるよう繰り返し求めてきました。消費者は以前にも増して調達のあり方に関心を持っており、企業側にはより開かれた説明責任が求められていると指摘しています。「英国製だから安心」ではなく、「どこで、誰が、どのように作ったか」まで見える化することこそが本質だという立場です。

縫製技術の継承という課題

もうひとつMake it Britishが繰り返し取り上げているのが、担い手不足という課題です。ヒルズ氏によれば、イギリス国内の縫製工場の約95%が外国出身のスタッフによって支えられているといい、東欧諸国のように国を挙げて縫製技術を教育する仕組みがイギリスには乏しいことも課題として挙げられています。ブレグジット以降、こうした人材の確保はさらに難しくなっているとされ、若い世代に「縫うこと」の魅力とキャリアの可能性を伝えていく必要性が、Make it Britishの活動のもうひとつの軸になっています。

「Buy less. Choose well. Make it last.(少なく買い、よく選び、長く使う)」


— ヴィヴィアン・ウエストウッド(英国人ファッションデザイナー)

この言葉は英国のエシカルファッションを語るうえでよく引用されるフレーズですが、Make it Britishが伝えようとしている姿勢とも重なります。大量消費ではなく、作り手の技術と時間に見合った対価を払い、長く着られるものを選ぶこと。それは英国に限らず、生地選びから丁寧なものづくりを大切にする、すべての手芸・縫製愛好家に通じる考え方ではないでしょうか。

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まとめ

ケイト・ヒルズ氏がたったひとりで始めたブログから始まったMake it Britishは、いまや英国製造業の「見えづらさ」を可視化する存在として、ディレクトリ・ポッドキャスト・トレードショー・ブランド支援プログラムと、多面的な形に育っています。毎年3月9日の「Made in UK Day」をはじめ、年間を通じた地道な発信が、イギリス国内に残る仕立て職人や縫製工場の技術を次の世代へつなぐ小さな、しかし確かな力になっているようです。

作り手の存在に光を当て、質の良いものを長く大切にするという姿勢は、私たちが生地を選び、手を動かしてものづくりを楽しむ時間とも、どこかでつながっているように感じます。

参考リンク

Make it British 公式サイト:makeitbritish.co.uk
Made in UK Day について:Awareness Days
Instagram:@makeitbritish

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