生地・繊維業界の世界共通の色見本 SCOTDIC

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いつでも同じ色を確認できる「動かない基準」それが色見本なのです

生地の色を、世界共通の言葉にする ― SCOTDICという物差しのこと

「赤」とひとことで言っても、頭に浮かぶ色は人によって少しずつ違います。少し朱色がかった赤を思い浮かべる人もいれば、深いワインレッドを思い浮かべる人もいるでしょう。これが趣味の世界の話なら、それも味わいのひとつです。けれど生地づくりの現場では、この「なんとなくの赤」では困ってしまいます。海を越えて工場とやり取りをする生地業界には、誰が見ても同じ色だとわかる「共通のものさし」が必要なのです。今日は、そんな役割を担ってきた色見本システム「SCOTDIC(スコットディック)」について紹介してみようと思います。


SCOTDICの成り立ち ― 日本とフランス、ふたつの色の知恵

SCOTDICは、実際に生地を染めてつくられた「色の見本帳」です。名前は「Standard Color of Textile(繊維の標準色)」と、フランス語の「Dictionnaire Internationale de la Couleur(国際色彩辞典)」というふたつの言葉を組み合わせたもの。もともと日本で育まれてきた繊維業界向けの色の基準と、フランスで培われてきた色彩の体系が、ひとつに結びついてできあがったシステムなのだそうです。

単なる色の一覧表ではなく、実際に布に染料を乗せてつくられているところが、SCOTDICのいちばんの個性です。印刷したカラーチップとは違い、生地ならではの光沢や透け感、織り目の凹凸までもがそのまま色として現れます。モニター越しでは絶対にわからない「本物の色」を、手に取って確かめられるのです。

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色を「並べる」ための考え方

SCOTDICの色は、なんとなく並んでいるわけではありません。「色合い(赤みか青みかといった系統)」「明るさ」「鮮やかさ」という3つの軸をものさしにして、ひとつひとつの色に居場所が決められています。これは色彩学の世界で古くから使われている考え方をベースにしていて、絵の具のパレットを、系統ごとにきれいに整理し直したイメージに近いかもしれません。

番号ひとつで、同じ色を指させる

そのうえで、それぞれの色には数字の番号が振られていて、誰であっても番号さえ伝えれば同じ色を正確に指し示せる仕組みになっています。ちょうど、住所を伝えれば知らない土地でも同じ場所にたどり着けるのと似ているかもしれません。「もう少し明るい赤」というあいまいな言葉ではなく、番号ひとつで意図がぴたりと伝わる。これがSCOTDICの一番の強みです。

豆知識:同じ「赤」の生地でも、染めた時期によってわずかに色味がずれてしまうことがあります。これを業界では「ロットブレ」と呼びます。SCOTDICのような共通の色番号があると、こうしたわずかなズレに気づいたときも「基準からどちらの方向にどれくらいずれているか」を具体的に話し合えるようになります。

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見本帳は1種類じゃない ― 生地の種類に合わせた3つの顔

意外と知られていないのですが、SCOTDICの見本帳にはいくつかの種類があります。光沢のあるポリエステル生地に染めたタイプ、綿のポプリン生地にマットに染めたタイプ、そしてウールの毛糸そのものに染めたタイプと、素材ごとに専用の見本帳が用意されているのです。理由は単純で、同じ「番号の色」でも、光沢のある素材とマットな素材とでは、目に映る印象がまったく違って見えてしまうから。素材そのものに近い状態で色を確認できるよう、細やかに使い分けられているのですね。それぞれの見本帳には、2000色を超える豊富な色が収録されているといわれています。

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実際の現場では、どう使われているの?

ひとつの生地が完成するまでには、デザイナーが色を決め、それを産地の染色工場が試し染め(サンプル染め)で再現し、双方が確認しあうという工程があります。デザイナーと工場が違う国、違う言語の場合、「もう少し温かみのある赤」といった言葉だけのやりとりでは、なかなか意図が伝わりません。そこでSCOTDICの番号を挟むことで、言葉の壁を越えて「この色番号の色をお願いします」と、迷いのないやりとりができるようになります。

さらに、試し染めと量産で色がずれていないかを確かめる、品質チェックの基準としても使われています。流行の色を予測するトレンド情報の分野でも、パントンと並んでSCOTDICの番号が参考にされることがあるそうです。生地の世界の裏側には、こうした地道な「答え合わせ」の積み重ねがあるのですね。

“Having these standards are akin to badges, signs of your professionalism manifest.”
―「こうした基準を持つということは、いわばバッジのようなもの。あなたのプロフェッショナリズムの証なのです。」


Fashion-Incubator「Talking the Talk: Textile Color Standards」

この言葉のとおり、色の基準を持っているということは、その仕事に真剣に向き合っている証でもあるのだと思います。感覚だけに頼らず、誰もが同じものを見て話せる状態をつくる。それは地味な作業に見えて、実はものづくりの信頼を支える、とても大切な工程なのです。

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パントンとの違いは、どこにある?

色見本と聞くと、「パントン(PANTONE)」を思い浮かべる方も多いかもしれません。パントンは印刷や建築、デジタルデザインなど非常に幅広い分野で使われている色の基準ですが、SCOTDICはあくまで生地・繊維の世界に軸足を置いたシステムです。実際に染色した生地の見本であることにこだわっているのも、そこが理由なのだと思います。PANTONE にも生地の色見本がありますが、SCOTDICの方が生地・繊維に特化しているというのが特徴です。どちらが優れているという話ではなく、用途によって使い分けられているという方が正確でしょう。

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「変わらない」ことの価値と、国旗にまつわる小さな話

面白いことに、SCOTDICの色見本帳はシーズンごとに内容が変わることのない、いわば永続的な資料として設計されています。トレンドカラーの提案とは別に、いつでも同じ色を確認できる「動かない基準」があること自体に意味があるのです。世界中で8000社以上ものメーカーやブランドがこの仕組みを使っているといわれており、生地選びの現場で長く愛されてきたことがうかがえます。

余談ですが、こうした「動かない色の基準」としての性格から、SCOTDICは国旗や団体のシンボルカラーなど、色がぶれてはいけない場面の参照先として使われることもあるそうです。ファッションの流行とはまったく違う場面でも、静かに信頼される基準になっているというのは、なんだか素敵な話だと思いませんか。

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おわりに ― 色の物差しを知ると、生地選びが少し楽しくなる

普段生地を選ぶときには、番号や仕組みのことを意識する必要はありません。手に取って、光にかざして、好きだなと思う色を選べばそれでじゅうぶんです。けれど、その一枚の生地の色が確かなものとして届くまでの裏側に、こうした地道な「色を伝える工夫」があると知ると、なんだか生地への愛着がもうひとつ増えるような気がします。jumble shop oneでご紹介している生地たちも、そんな見えない工程を経て、私たちの手元まで届いています。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

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