パッチワーク・キルトの道具

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使うほどに道具が手になじんでいく過程もまたキルト制作の楽しみのひとつ

パッチワーク・キルト制作の道具事典 — 用途別に見る、針仕事を支える小さな相棒たち

一枚の布が、パッチワークキルトへと形を変えていく道のりには、たくさんの道具が寄り添っています。裁つための道具、印をつけるための道具、縫うための道具、そして仕上げるための道具——それぞれに小さな役割があり、その積み重ねが一枚の作品を静かに支えています。今日は、パッチワークやキルト制作の現場でよく使われる道具を、工程の流れに沿ってひとつずつご紹介していきます。すでにお使いの道具も、これから揃えたい道具も、その背景にある物語とともに眺めてみませんか。


01. 裁断・カット用の道具 — すべての工程の出発点

パッチワークは、正確な裁断から始まります。ピースの角が数ミリずれるだけで、縫い合わせたときに歪みが出てしまうため、この工程には特に丁寧な道具選びが求められます。

ロータリーカッター

円形の刃を転がしながら布をまっすぐにカットする、パッチワークには欠かせない道具です。ハサミで一枚ずつ裁つよりも直線が美しく揃い、複数枚を重ねて一度にカットできるのも大きな利点。実はこの道具、日本のカッターメーカーが1979年に発明した世界初のロータリーカッターがルーツで、発売後は北米のキルターたちの間で徐々に広まり、今では世界中の裁断の現場で選ばれる存在になりました。

折る刃式カッターナイフ誕生から23年後の1979年、刃を転がしながらカットする世界初のロータリーカッターが誕生した。発売後は北米のキルターに次第に浸透しはじめ、今では世界中の裁断の現場で選ばれている。


オルファ株式会社 公式サイト「折る刃式カッターナイフの誕生秘話」

カッティングマット

ロータリーカッターを使う際に机や布地を傷つけないよう下に敷く、専用の自己修復マットです。表面には方眼のガイドラインが印刷されているものが多く、定規なしでもある程度まっすぐ裁つ助けになってくれます。作業台のサイズに合わせて、A2相当の大判から折りたたみ式まで選べます。

パッチワーク定規(キルト定規)

透明なアクリル製で、目盛りとあわせて45度・60度といった角度線が刻まれているのが特徴です。三角形や菱形のピースを裁つときにこの角度線があると、いちいち分度器を使わずに正確なカットができます。厚みがあるほどロータリーカッターの刃が定規に乗り上げにくく、安定して作業できます。

布切りばさみ/糸切りばさみ

ロータリーカッターが苦手な曲線のカットや、細かな作業には昔ながらのハサミが頼りになります。布切りばさみは布地専用に刃を研いであるため、紙を切ってしまうと切れ味が落ちてしまいます。糸切りばさみは先端が細く、縫い代の際どい部分に切り込みを入れるときや、糸始末のときに重宝します。用途ごとに刃を使い分けるのが、長く切れ味を保つコツです。

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02. 描く・測る用の道具 — 図案を布に写す

型紙を作ったり、キルティングの模様を布に写したりする工程では、あとから消えるかどうかがとても重要になります。

チャコペン・フリクションペン

図案やキルティングラインを描くための筆記具です。水で消えるタイプは霧吹きで簡単に消せて扱いやすく、熱で消えるフリクションタイプはアイロンやこすれで瞬時に消えるのが魅力。ただし熱で消えるタイプは、逆に低温で冷やすとラインが復活することがあるため、完成後の保管環境には少し注意が必要です。生地の色や用途によって、両方を使い分けている作り手も多いようです。

グラフィックペーパー/製図用紙

パターン(型紙)を起こしたり、既存の図案を写したりするために使う方眼入りの用紙です。方眼のマス目に沿って線を引けるので、直角や等間隔の縫い代を正確に取ることができます。オリジナルのブロックパターンを設計するときにも活躍します。

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03. 縫製・キルティング用の道具 — 布と布をつなぐ

ここからが、パッチワークキルトの核となる工程。ピースを縫い合わせる「ピーシング」と、3層を縫い留める「キルティング」、それぞれに適した道具があります。

キルト針(パッチワーク針)

ピーシング用(布を縫い合わせる用)とキルティング用(3層を縫い留める用)とで、適した長さが異なります。ピーシングにはやや長めの針が布運びをしやすく、キルティングには3層の厚みを何度も貫くため短めの針のほうが扱いやすいとされています。用途に合わせて長さを使い分けると、手や指への負担も軽くなります。

キルト糸

縫い合わせ用にはポリエステルや綿の糸、キルティング用には摩擦に強い丈夫なキルト糸が使われます。特にキルティング用の糸は、何度も布を貫通させても毛羽立ちにくいよう加工されているものが多く、ロウ引きされたタイプは針の通りがなめらかになります。

シンブル(指ぬき)

キルティングの際、針を押し出す指先を守るための道具です。金属製・革製・ゴム製などがあり、指のかたちや押す力の入れ方によって合うタイプが変わってきます。この道具の歴史は驚くほど古く、その原型は古代ローマ時代までさかのぼるとされています。

シンブルの原型は古代ローマ時代にまでさかのぼる。青銅や骨で作られたシンプルな形状のものが出土しており、当時からすでに裁縫を助ける道具として使われていたと考えられている。語源は「Thumb bell(サムベル)」——親指にのせる鐘のような形からその名がついた。


— Little Thimble-World

キルトフープ(枠)

キルティングをするときに布地をピンと張るための、丸い木枠です。布がたるんだ状態で針を刺すと、目が不揃いになったり布に歪みが出たりしますが、フープで適度な張りを保つことで、均一な針目を積み重ねやすくなります。円形のほか、大きな作品には四角い「キルティングフレーム」が使われることもあります。

まち針(キルト用まち針)

頭が平らで軸が細いタイプがキルト用として好まれます。頭がガラス製のものは、アイロンをかけても溶けないため、仮止めしたままアイロンを当てられるのが利点です。頭が大きく丸いプラスチック製のまち針は熱で溶けてしまうことがあるので、アイロン作業の多いパッチワークでは注意して選びたいところです。

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03. 仕立て・仮止め用の道具 — 3層を一つにする

トップ(表布)・キルト綿・裏布という3枚の層をひとつにまとめるのが、キルト制作ならではの工程です。この3層をずれないよう固定する「仮止め」がしっかりできているかどうかで、その後のキルティングのしやすさが大きく変わってきます。

しつけ針/しつけ糸

トップ・キルト綿・裏布の3層を、放射状や格子状に大きな針目で縫い留めていく「しつけ作業」に使います。しつけ糸は本縫いのあとに抜き取りやすいよう、あえて滑りのよい糸が選ばれることが多いです。手間のかかる工程ですが、ここでの丁寧さが仕上がりの美しさに直結します。

キルティング用ピン(安全ピン)

しつけ糸の代わりに3層を固定する、湾曲した形の安全ピンです。針を糸で運ぶ手間がなく、ワンタッチで留められるため、大きな作品を手早く仮止めしたいときに重宝します。ミシンキルティングを中心に作業する方には、特に定番の道具です。

キルト綿(ドミット芯)

トップと裏布の間に挟む中綿で、作品にふんわりとした厚みと立体感を与えてくれます。厚みや素材(綿・ポリエステル・ウールなど)によって仕上がりの表情が変わり、薄手のものはキルティングの針目が入れやすく、厚手のものはより存在感のあるボリューム感が出せます。作品の用途 — 壁掛けにするのか、実用のブランケットにするのか — によって選び分けるとよいでしょう。

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05. アイロン・整形用の道具 — 仕上げの表情をつくる

縫い代を倒し、角をきちんと出す——地味に見えて、実は作品全体の仕上がりを大きく左右する工程です。

パッチワーク用アイロン(ミニアイロン)

細かい縫い代を一枚ずつ丁寧に倒していくための、コンパクトなアイロンです。通常サイズのアイロンでは扱いにくい小さなピースや、ブロックの角の処理に向いています。手元に置いて頻繁に使う道具なので、コードレスタイプを選ぶ方も増えています。

アイロン台/アイロンマット

裁断台のすぐそばに、手元でサッと使える小さめのマットを置いておくと、作業の流れを止めずに縫い代を倒せます。大きなアイロン台を毎回引っ張り出す手間が省け、ピーシングとアイロンがけを交互に繰り返すパッチワークの制作スタイルにはよく合います。

目打ち

先端の尖った棒状の道具で、角をきれいに出したり、ミシンで縫うときに布を少しずつ送る手助けをしたりします。アイロンで縫い代を倒す際に、指では届きにくい細かな部分を押さえるのにも使え、仕上がりの精度をぐっと上げてくれる小さな名脇役です。


まとめ — 道具を知ることは、布と向き合う時間を知ること

ロータリーカッターのように工業デザインの発明から生まれたものもあれば、シンブルのように古代から人の指先を守り続けてきたものもある。パッチワークやキルト制作の道具たちは、それぞれ異なる時代と場所で生まれながら、今この瞬間、私たちの手元で同じ一枚の布に向き合っています。すべてを一度に揃える必要はありません。作りたいものに合わせて少しずつ選び、手になじませていくその過程もまた、キルト制作の楽しみのひとつなのだと思います。

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