作品をめぐる著作権トラブル

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機能上どうしても行き着く基本的な形や構造そのものは著作権の保護対象になりません

「盗作だ」の一言で誰かの手仕事が消える ―作品をめぐる著作権トラブル

ストライプ柄のフェルトスリッパ。丸みを帯びたシンプルなあみぐるみ。誰が作っても、たどり着く形はそう変わらないはずの、ごくありふれた手仕事たち。ところが海外のハンドメイド市場では、こうした「基本のかたち」に対して、フォロワーの多いデザイナーやブランドが「自分のオリジナルの模倣だ」と主張し、EtsyなどのプラットフォームにDMCA(著作権侵害)削除申請を送りつけるという出来事が繰り返し話題になっています。


01|「削除申請」で、ある日突然お店から商品が消える

この手のトラブルには、だいたい共通した流れがあります。まず、ある程度名の知られたデザイナーやブランドが、個人作家の作品を見つけて「これは自分のデザインをコピーしたものだ」とSNSで公に指摘します。次に、Etsyのようなプラットフォームに正式な著作権侵害の通知(アメリカのDMCA=デジタルミレニアム著作権法に基づく削除申請)を送ります。プラットフォーム側は法的責任を避けるために、事実関係を精査する前にまず該当商品を非公開にすることが多く、申請を受けた個人作家の売上や信用、これまで積み上げてきたレビューが一夜にして失われてしまうのです。

厄介なのは、対象になるのが「誰が見ても唯一無二」と言えるような独創的な作品ではなく、ストライプ柄のスリッパや丸い頭のあみぐるみのように、編み物・洋裁の世界で昔から使われてきたごく基本的な構造であるケースが多いという点です。フォロワー数やブランド力で優位に立つ側が「先に主張した者勝ち」のような形で、個人の作り手を委縮させてしまう構図が、繰り返し問題視されてきました。

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02|「基本のかたち」は、そもそも著作権で守れない

ここで整理しておきたいのが、著作権が本来どこまでを守るものなのか、という点です。アメリカにも日本にも共通する考え方として、スリッパやぬいぐるみのような「実用品」の場合、機能上どうしても行き着く基本的な形や構造そのものは、著作権の保護対象にならないとされています。保護されうるのは、その実用的な部分から切り離せる、装飾的・芸術的な要素だけです。

つまり、こういうことです

・ストライプの配色や配置そのものは、幾何学的なパターンとして著作権の対象になりにくい
・「履き口があって、足を包む形」というスリッパの基本構造は、誰が作っても似通う実用形状
・丸い頭に短い手足がついた、ごく一般的なあみぐるみのシルエットも同様
・一方で、特徴的な刺繍やオリジナルキャラクターの顔立ちなど、装飾として独立させられる部分は保護対象になりうる

また「トレードドレス」という言葉も、この手の主張でしばしば持ち出されます。本来は商標法の枠組みで、商品の見た目や包装が「あの会社の商品だ」とひと目でわかるほど強い識別力を持つ場合に使われる概念です。個人の手仕事レベルの一般的な構造にこの言葉を当てはめるのは、法律の専門家の間でも無理があるという指摘が多くあります。

“…or there is no real copyright, or that isn’t copyrightable.”
(=そもそも著作権が存在しない、あるいは著作物として認められない場合もある)


Crochetpreneur「Crochet Pattern Copyright: The Real Deal with Gordon Firemark」より

削除申請を受けた側が異議申し立て(カウンターノーティス)をすれば、いったん商品を復活させることも制度上は可能です。ただしそのためには、著作権の知識や、時に弁護士への相談まで必要になることもあり、個人で手芸を楽しんでいる作り手にとって、その労力とハードルは決して小さくありません。

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03|なぜここまで反発を招くのか

こうした騒動が起きるたびに、手芸コミュニティの反応は強いものになります。理由は大きく三つあると感じています。

一つ目は、力の非対称性です。フォロワー数やブランドの知名度で勝る側が声を上げれば、SNS上ではそれだけで「正しいこと」のように見えてしまいます。対する個人作家は反論の場も限られ、黙って削除を受け入れるしかない状況に追い込まれがちです。

二つ目は、「晒し行為」を伴うことです。単に削除を申請するだけでなく、SNS上で名指しして「盗作している」と公表する行為は、たとえその後に法的な非があったと判明しなくても、対象になった作り手の評判やお店の信用を先に傷つけてしまいます。これは名誉毀損の観点からも問題視されることがあります。

三つ目は、手芸という文化そのものへの侵食です。編み物や洋裁の基本パターンは、何世代にもわたって人から人へ受け継がれ、共有されてきた「みんなのもの」という側面があります。それを一個人や一企業が独占しようとする姿勢は、コミュニティの空気そのものに対する脅威として受け止められるのです。だからこそ「Copyright Troll(著作権トロール)」という強い言葉で批判されることになります。

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まとめ|「共有された基本形」への敬意を忘れずに

手仕事の世界には、長い時間をかけてみんなで育ててきた「基本のかたち」がたくさんあります。それは誰か一人のものではなく、先人たちが積み重ねてきた知恵の集合体です。もちろん、そこに自分らしい工夫やオリジナリティを加えていくことは大切ですし、本当に独創的な部分が模倣されたときには、声を上げる権利は当然あります。ただ、その線引きを見誤って基本形そのものまで独占しようとすると、かえって作り手同士の信頼関係を壊してしまう。今回のようなトラブルは、その難しさを教えてくれる出来事だと思います。

ファブリックを扱う私たちにとっても、他人事ではないテーマです。生地の柄や作品の形には、みんなで受け継いできた「共有地」のような部分と、自分だけのオリジナリティの部分が、いつも重なり合っています。その境界線を大切にしながら、これからも手仕事を楽しんでいけたらと思います。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

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