William Morris の版権を管理する主要な3組織

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日本でもウィリアム・モリスのデザインをプリントした生地は人気があります。ちゃんとした団体からライセンスを取得して製品化されたものは柄も精緻で高品質。
一方で、百均などで見かける絵がぼやっとした感じのモリスのデザインを使った商品。あれはライセンス契約されていないため精細なデータが使われてないんです。パブリックドメインなので自由に使用できるとはいえ、残念な仕上がりですよね。

 

ウィリアム・モリスのデザインを守る3つの組織 — 版権・ブランド・アーカイブの今

アーツ・アンド・クラフツ運動の旗手、ウィリアム・モリス(1834–1896)が世を去ってから、すでに130年近くが経ちます。彼のデザイン——葉と実が絡み合う「いちご泥棒」、ゆったりとした曲線を描く「柳枝」——は今もなお壁紙や生地に印刷され、世界中の部屋を飾り続けています。

没後100年以上が経過しているため、モリスのデザインそのものの著作権(著作財産権)は多くの国でパブリックドメインとなっています。しかし実際には、「モリス」の名を正当に継承する組織がいくつか存在し、それぞれが異なる形で彼の遺産を管理・活用しています。ファブリックを扱う立場として、その全体像を整理しておきたいと思います。


01  Morris & Co. / Sanderson Design Group — 版木を受け継いだ商業的後継者

現在「Morris & Co.」ブランドとして壁紙やファブリックを製造・販売しているのが、Sanderson Design Groupです。一般に「モリス商会」として知られるこのブランドは、モリス自身が1861年に設立した「モリス・マーシャル・フォークナー商会」に端を発し、1875年に単独経営となって「Morris & Co.」へと変わりました。

商会は1940年に解散しますが、その直後にイギリスの老舗インテリアメーカー、Arthur Sanderson & Sons(サンダーソン)がアーカイブと商標権、そしてオリジナルの版木(ウッドブロック)を買い取りました。

アーカイブには版木や、製造記録台帳、歴代の壁紙サンプルが収蔵されており、現代のデザインチームが同じ建物の中でそれらを参照しながら新コレクションを生み出している。


Hotel Designs, Sanderson Design Group アーカイブ特集 (2023)

版木という「物証」が持つ意味

Sanderson Design Groupが最大の強みとするのは、モリスが実際に使っていたオリジナルの版木を今なお所有していることです。ハンドブロックプリントでは、一色ごとに別の版木を紙やファブリックに丁寧に押し当てていきます。数日かけて色を重ねるこのプロセスは、量産品とは根本的に異なる密度と精度を生み出します。アーカイブへの撮影は厳しく制限されており、その資料の希少性は今も厳重に守られています。

現在のMorris & Co.は、Sanderson Design Groupが擁する6つのブランドのひとつ。他にはZoffany(ゾファニー)やHarlequin(ハーレクイン)などが含まれ、いずれも独自のアーカイブを持つ英国を代表するインテリアブランドです。Morris & Co.はその中でも際立って歴史的な文脈を持ち、「正統な継承者」としてのブランディングを貫いています。

PROFILE

Morris & Co. / Sanderson Design Group
設立:1861年(Morris & Co.の前身として)
本社所在地:イギリス、バッキンガムシャー
特徴:オリジナル版木・アーカイブの所有、商業ブランドとしてのライセンス展開
公式サイト:wmorrisandco.com

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02  William Morris Gallery — 少年時代の家が世界最大の美術館に

ロンドン東部、ウォルサムストーのロイド・パーク内に建つウィリアム・モリス・ギャラリーは、1762年頃に建てられたジョージア様式の邸宅「ウォーター・ハウス」を利用した美術館です。モリスが10代の8年間(1848〜1856年)を過ごしたこの家は、1856年に新聞王エドワード・ロイドに売却され、その息子がウォルサムストー区に邸宅と庭園を寄贈。1950年、時の首相クレメント・アトリーの手によってミュージアムとして開館しました。

2012年には大規模なリニューアルが行われ、ジョージア・ヴィクトリア朝の建築様式に着想を得た新棟が加わりました。翌2013年には「全英ミュージアム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

1万点以上のコレクション、そして無料公開

収蔵点数は1万点以上。オリジナルのデザイン草稿から、テキスタイル、壁紙、ステンドグラス、陶磁器、金工品、書籍、アーカイブ資料まで、モリスの全側面を網羅した、世界最大のモリス専門コレクションです。ロンドン・ウォルサム・フォレスト区が運営し、入館は無料。火曜から日曜の午前10時〜午後5時に開館しています。

ギャラリーのライセンスプログラムは商業ブランドと直接連携し、アーカイブ画像の提供やギャラリーロゴの使用許可を行っている。プログラムから得られる収益はすべて、ギャラリーの無料公開と教育プログラムの維持に充てられる。


William Morris Gallery, Licensing

公的機関としてのライセンス事業

ギャラリーはライセンスプログラムを積極的に運営しており、商業ブランドに対してアーカイブ画像や高精細なデジタルデータを提供するほか、「William Morris Gallery」のロゴ使用も許諾しています。公的機関が認証することで、製品に一種の「お墨付き」が加わります。ライセンス先は倫理的・環境的な姿勢を重視して選定されており、単なる商業取引に留まらない点が特徴です。

PROFILE

William Morris Gallery
開館:1950年
所在地:Lloyd Park, Forest Road, Walthamstow, London, E17 4PP
運営:ロンドン・ウォルサム・フォレスト区
特徴:1万点超の世界最大コレクション、公的機関によるライセンス、入館無料
公式サイト:wmgallery.org.uk

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03  The William Morris Society — 思想と遺産を学術的に守る慈善団体

1955年に設立されたウィリアム・モリス協会(The William Morris Society)は、慈善団体として登録された学術・文化団体です。設立の翌年、1966年にはモリスの娘メイ・モリスが父の遺産継承のために設立した「ケルムスコット・フェローシップ」と合流し、より強固な基盤を持つ組織となりました。

協会の拠点は、ハマースミスのテムズ川沿いに建つジョージア様式の邸宅「ケルムスコット・ハウス(26 Upper Mall)」。モリスが人生最後の18年間(1878〜1896年)を過ごしたこの家は、現在はコーチハウスと地下室を協会が使用しています。メインの邸宅は現在も個人住宅として使用されているため、見学できるのはコーチハウスと下層の部屋のみ。グレード II*指定の文化財建造物です。

デザインを超えた、思想の継承者

協会が守ろうとしているのは、モリスの「デザイン」だけではありません。詩人・翻訳家・社会主義者・環境保護論者としてのモリスを総合的に研究・発信しています。年に2回発行するジャーナルと年3回の会報を通じて、モリスの思想と活動を世界に発信。会員資格は世界に開かれており、研究者から愛好家まで幅広い層が名を連ねています。

協会のライセンスプログラムは、モリスの価値観と美意識を尊重する形で彼の作品へのアクセスを提供している。ホームウェアのライン、文具コレクション、ファッション、教育コンテンツなど、幅広いジャンルの製品化を対象とする。


The William Morris Society, Licensing

協会もまたライセンスプログラムを持ち、所蔵する壁紙・テキスタイル・刺繍・写真などのアーカイブ画像の使用許諾を行っています。ライセンス収益はすべて協会の慈善活動に充てられます。ライセンス先の選定は慎重で、モリスが生涯大切にした「美しいものを、誠実に作る」という哲学に沿ったパートナーが選ばれます。

PROFILE

The William Morris Society
設立:1955年(1966年にケルムスコット・フェローシップと合流)
所在地:Kelmscott House, 26 Upper Mall, Hammersmith, London, W6 9TA
特徴:学術・思想的継承、年2回のジャーナル発行、慈善団体としてのライセンス運営
公式サイト:williammorrissociety.org


3つの組織はそれぞれ何を守っているのか

3つの組織は、それぞれ異なる角度からモリスの遺産を継承しています。Morris & Co.(Sanderson Design Group)は、版木という物証と商標権を武器に、商業ブランドとして「モリスの復刻」を届け続けています。William Morris Galleryは、公的機関として最大のコレクションを守り、学術的な権威とライセンス収益を教育に還元しています。そしてThe William Morris Societyは、デザインの表層だけでなく、思想・文学・社会変革者としてのモリス全体を後世に伝えることを使命としています。

モリスのデザインはパブリックドメインですが、これらの組織が保有する「特定の高精細画像データ」「団体のロゴ」「アーカイブの原画データ」を使用する場合や、製品に公的なお墨付きを付与したい場合は、それぞれの組織とのライセンス契約が必要です。「モリス風」と「正統なモリス」の間には、こうした歴史と組織の重みがあります。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

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