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生地はどうやって柄になるの?
プリント方法「従来のスクリーン印刷」と「デジタルプリント」を比べてみる
白い生地に花柄が咲き、鮮やかなボタニカル模様が広がる——布の世界のプリントは、ひとつの芸術です。でもふと、「この柄はどうやってついているんだろう?」と思ったことはありませんか?
実は、プリント生地の「柄づけ」の方法は大きく分けてふたつ。長年にわたって主流だったスクリーン印刷(ロータリースクリーン印刷)と、近年急速に広まっているデジタルプリントです。今回はこのふたつの方法を、工場や業界の視点から紐解いてみましょう。
従来の方法——ロータリースクリーン印刷とは
現在も世界の大量生産の中心を担っているのが、ロータリースクリーン印刷です。円筒形(シリンダー状)のスクリーンを連続回転させながら生地にインクを押しつけていく方法で、ベルトコンベアのように生地が流れ続けながら次々と印刷されていきます。
大きな特徴は、色ごとにスクリーンを1枚ずつ用意すること。たとえば赤・青・緑の3色の柄を印刷するなら、3枚のスクリーンが必要です。多色になるほどスクリーンの枚数も増えますが、一般的には6〜8色に抑えてコストを管理することが多いとされています(12色対応の機械もあります)。
Rotary screen printing accounts for approximately 65% of printed goods, while flat-bed screen printing accounts for about 17% of the market.— CottonWorks(コットン業界のリサーチ機関)
※ロータリースクリーン印刷は世界のプリント生地全体の約65%を占める。フラットスクリーン印刷がさらに約17%で、従来型が市場の80%以上を担っています。
また、スクリーン印刷ならではの得意技もあります。ラメや箔を使ったゴールド・シルバーの本物の輝き、特殊な薬品で生地を部分的に溶かして透け感を出す「バーンアウト加工」、グリッターやパフ(立体的な盛り上がり)など、デジタルでは再現できない表現が可能です。大量生産において安定した色の再現性が高い点も、今日も多くの工場に選ばれる理由です。
デジタルプリントとは——インクジェットが生地に直接描く
デジタルプリントは、家庭用インクジェットプリンターの技術を生地用に拡張したものです。デジタルファイルのデザインをそのままプリントヘッドが読み取り、インクの微細な粒子を生地に直接吹き付けていきます。スクリーンを1枚も使いません。
最大の特徴は「色数に制限がない」こと。グラデーション、写真のような繊細な表現、1万色以上の色の組み合わせも、追加コストなしに印刷できます。デザインの変更も、パソコン上でデータを変えるだけで即座に対応可能。スクリーンの彫刻や段取り替えに数週間かかる従来の方法と違い、デジタルプリントはデータを機械に読み込ませれば数分後には印刷を始められます。
NOTE
デジタルプリントに使われるインクには大きく「リアクティブ染料(綿・麻などの天然繊維向け)」「酸性染料(シルク・ウール向け)」「顔料インク(幅広い素材対応)」「昇華転写インク(ポリエステル向け)」などがあります。それぞれ生地の素材や用途によって使い分けられています。
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ふたつの方法を比べてみると
01 コストと生産量の関係
スクリーン印刷は初期費用(スクリーンの制作)が高いため、大量に生産するほど1メートルあたりのコストが下がります。業界の調査会社Gherziの試算では、同じデザインを3,000m以上印刷する場合はスクリーン印刷の方が経済的、1,200m以下ならデジタルプリントの方がコストを抑えられるとされています。
少量・多品種・短納期——ショップやブランドが小ロットでオリジナル生地を作りたい場合、デジタルプリントは理にかなった選択です。
02 水と環境への影響
ここはデジタルプリントが圧倒的に有利です。スクリーン印刷では生地1mあたり50〜60mlの水を使うのに対し、デジタルプリントはわずか5〜9ml。同じ面積の印刷でも10分の1以下の水使用量です(FESPA調査)。
Digital textile printing can save as much as 95% of industrial water usage, whilst energy consumption can be reduced by 75%.— FESPA(欧州印刷業界団体)
※デジタルテキスタイルプリントは、従来型に比べて水使用量を最大95%、エネルギー消費を最大75%削減できるとされています。ロータリー型から切り替えた工場が水使用量を70%削減した事例も報告されています。
スクリーン印刷では、インクを版に通す物理的な工程上、大量のインク溶液と水が必要になります。洗浄・スチーム・後処理の各段階でも水と化学薬品を消費し、その廃水が環境負荷の大きな原因となっています。繊維産業は世界の淡水汚染の約20%を占めるとも言われており、デジタルへの移行は環境的な観点から急務とされています。
03 デザインの表現力と納期
デジタルプリントは写真のようなリアルな表現や、微妙なグラデーションに強みがあります。スクリーン印刷は色数が制限されるため、デザインによっては複雑な色調の再現が難しくなることも。一方で、スクリーン印刷は大きな面積を均一な色で染め上げること(ベタ塗り)は得意で、デジタルではこの均一性が難しい場合があります。
納期の面では、スクリーン印刷はスクリーン制作から完成まで通常3〜6週間かかるのに対し、デジタルプリントはデザインデータを渡せば数日で対応できることもあります。ファストファッション業界の短いサイクルに対応できるのも、デジタルの大きな強みです。
どちらがよい、ではなく「共存」の時代へ
大手印刷機メーカーSPGPrintsのJos Notermans氏は、「デジタルがいつかロータリーを完全に置き換えると考える人もいたが、実際にはどちらにも独自の強みがあり、共存していくのが自然だ」と述べています。業界全体でも、大量生産にはスクリーン印刷、小ロット・高デザイン性にはデジタルという使い分けが進んでいます。
私たちが手にとる生地の一枚一枚にも、こうした技術の積み重ねがあります。柄の複雑さ、発色の深み、触り心地——それぞれにその方法の「文法」が刻まれています。ショッピングの際にそんなことをふと思い出していただけたら、布との出会いがまた少し違った豊かさを帯びるかもしれません。

REFERENCES
- CottonWorks — Cotton Printing Types & Techniques
|米国綿花技術研究機関。スクリーン印刷の世界シェアのデータを参照。 - FESPA — The Environmental Benefits of Waterless Digital Textile Print Ink Systems
|欧州印刷業界団体。水使用量の比較データおよびエネルギー削減数値を参照。 - SPGPrints — When to Use Rotary Screen Printing and When to Choose Digital Textile Printing
|オランダの印刷機メーカー。両手法の設計上の制限と使い分けの判断基準を参照。 - SPGPrints — Digital Textile Printing vs Screen Printing: How to Make a Cost Comparison
|Gherziの損益分岐点試算(1,200m・3,000m基準)および環境負荷データを参照。 - Carbonfact — The Environmental Impact of Screen Printing, Digital Printing, and Fabric Dyeing
|繊維産業のカーボンフットプリント比較研究を参照。
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