マイクロファイバーってなんだろう – 日本発の超極細繊維

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暮らしの中で活躍するマイクロファイバー製品。便利な一方で、環境への負荷が問題になることも。うまく使っていかなきゃ。
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TEXTILE SCIENCE

マイクロファイバーってなんだろう

— 髪の毛100分の1、日本発の超極細繊維を解剖する

タオル、めがね拭き、フリースジャケット、掃除クロス——気づけばあちこちで「マイクロファイバー」という言葉を見かけます。でも、これっていったい何からできていて、なぜこんなに使われているのでしょう? 今回はマイクロファイバーの素材・構造・歴史・特性を科学的な視点でひもとき、身近な製品への活用例までご紹介します。テキスタイルの世界には、こんなに面白い技術が隠れていたのです。


マイクロファイバーとは?

マイクロファイバーとは、直径10マイクロメートル(μm)未満、太さ1デニール以下の超極細合成繊維のことです。「1デニール」というのは繊維の細さを表す単位で、9,000メートルの糸の重さが1グラムのとき、1デニールとなります。それ以下の細さがマイクロファイバーの条件です。

どのくらい細いかといえば、人間の髪の毛の直径はおよそ70〜80マイクロメートル。マイクロファイバーはその約100分の1、あるいはシルクの繊維よりもさらに細い糸です。素材はおもにポリエステルやナイロン(ポリアミド)といった化学繊維で、目的に合わせてこれらの組み合わせや比率が変えられます。

DATA

直径:8マイクロメートル以下(一般的な製品)
基準:1デニール(Dtex)以下
主原料:ポリエステル・ナイロン(ポリアミド)・ポリプロピレン
比較:人間の髪の毛の1/100、シルクより細い

マイクロファイバーは「日本生まれ」

マイクロファイバーの発展には、日本の繊維技術が大きく貢献しています。1950年代後半に超極細繊維を作る技術の試みが始まりましたが、当初は短くランダムな繊維しか作れず、実用的な応用は困難でした。転機となったのは1960年代の日本。東レの研究者・岡本三宜らの発見によって、連続した長い超極細繊維を安定して製造する技術が生まれました。

1970年代に市場に出た最初の成功した合成マイクロファイバーの一つであるウルトラスエードなどがこれに該当する。マイクロファイバーの使用はテキスタイル産業で拡大し、1990年代初頭にスウェーデンで初めて発表され、その後10年間でヨーロッパの製品として成功した。


Wikipedia「マイクロファイバー」

日本でも興味深い逸話があります。1970年代、マイクロファイバーを使ったスポーツ水着の開発が試みられましたが、素材が水分を大量に吸収してしまい水着として大失敗。その10年後、今度はヨーロッパで「吸水して汚れを絡めとるクロス」として見事に活路を開きました。失敗から生まれた発明、というのもこの素材の面白いところです。

日本でも東レやクラレが「海島型」と呼ばれる独自技術でマイクロファイバーの製造を確立。人工皮革「ウルトラスエード」や「クラリーノ」として、ファッション・工業・自動車シートなど幅広い分野に展開しました。

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なぜ「すごい」のか? 断面の秘密

マイクロファイバーの優れた性能を理解するには、繊維の「断面」を見るとわかりやすいです。普通のコットンやナイロンの繊維断面はほぼ丸形ですが、マイクロファイバーの断面は花びら状・星形・多角形のギザギザをしています。

STRUCTURE POINT

01   吸水性

ギザギザした断面の隙間が毛細管現象を生み出し、水分を素早く大量に吸い上げます。重さの約7倍の水分を吸収するともいわれています。

02   速乾性

吸収した水分が繊維の隙間に広がるため、蒸発面積が大きくなり乾きが速い。木綿タオルより数倍速く乾きます。

03   集塵力

角ばった繊維の先端が汚れや埃を物理的にかき取り、静電気の発生が細かいゴミを吸着。洗剤なしでも汚れが落ちる理由はここにあります。

04   柔らかさ

繊維が極めて細いため生地はしなやかで肌触りがよく、デリケートな表面(レンズ・液晶など)も傷つけにくいのが特徴です。

マイクロファイバーってなんだろう - 日本発の超極細繊維
マイクロファイバーってなんだろう – 日本発の超極細繊維

どうやって作られるのか? 2つの主な製法

超極細繊維を安定して量産するには、精密な製造技術が必要です。現在の主流は2つの方法です。

海島型(かいとうがた)紡糸

異なる2種類のポリマーを組み合わせて糸を作り、あとから一方を溶かして除去する方法です。断面を見ると、溶かされずに残る繊維(島)が、溶けるポリマー(海)の中に点在する様子から「海島型」と呼ばれています。東レの「ウルトラスエード」やクラレの「クラリーノ」はこの技術から生まれました。

近年は、環境負荷を下げるため有機溶剤の代わりに水溶性樹脂を使う方法や、再生ポリエステルを活用する動きも各社で進んでいます。

分割型(ぶんかつがた)紡糸

複数の成分を組み合わせた太い繊維を作り、後工程で物理的・化学的に分割して極細繊維にする方法です。清掃用クロスやタオルに使われるマイクロファイバーの多くがこの方法で作られています。繊維を「割る」ことで断面がギザギザになり、汚れをかき取る力が生まれます。

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身近にあるマイクロファイバー製品

今やマイクロファイバーはわたしたちの暮らしのあちこちに浸透しています。以下、代表的な製品カテゴリをご紹介します。Amazonでも多くの製品が購入できるので、参考にしてみてください。

01 / タオル・バスタオル

マイクロファイバー製品の中で最も普及しているのがタオルです。吸水力が高く速乾性があるため、ヘアドライタオルやスポーツタオルとして特に人気があります。濡れた髪に軽く押し当てるだけで水分が絡めとられ、ドライヤーの時間を短縮できます。洗車や水回りの拭き取りにも重宝されています。

マイクロファイバータオルを見る

02 / 掃除クロス・マイクロファイバークロス

最も応用が広い分野のひとつ。繊維のギザギザ構造が汚れや細菌を物理的にかき取るため、洗剤不要で使えます。キッチン・浴室・窓ガラス・鏡など、あらゆる場所で活躍します。調査によれば、マイクロファイバー製品を活用している人の100%が「掃除」に使っているとのデータもあるほどです。

マイクロファイバー掃除クロスを見る

03 / メガネ拭き・レンズクリーナー

繊維が非常に細く柔らかいため、精密なレンズ面を傷つけずに指紋や皮脂汚れを拭き取ることができます。メガネ、カメラレンズ、スマートフォンの画面拭きとして最適です。「トレシー」(東レ)はこの分野で特に知られたブランドです。

マイクロファイバーメガネ拭きを見る

04 / フリース・防寒インナー

マイクロファイバーは衣類にも広く活用されています。軽くて暖かいフリースジャケット、速乾性のスポーツインナー、あの「ヒートテック」に代表される保温下着など、多くがマイクロファイバー素材です。軽量・保温・速乾という性質が、現代のアウトドアウェアや機能性衣類の要となっています。

マイクロファイバーインナーを見る

05 / 毛布・着る毛布・クッションカバー

柔らかな肌触りと保温性が高い評価を得ているマイクロファイバーは、寝具やホームテキスタイルにも多用されています。特に「着る毛布」と呼ばれるガウンタイプのブランケットはほぼマイクロファイバー製。ウールや綿の毛布と違い軽量で、吸水性もあるのが特徴です。

マイクロファイバー毛布を見る


知っておきたい、環境への問題

マイクロファイバーは便利な素材ですが、一方で環境への影響が近年大きく注目されています。

ENVIRONMENT NOTE

合成繊維の衣類を洗濯すると、無数のマイクロファイバー(マイクロプラスチック)が排水に流れ出ます。下水処理場でも完全には除去しきれず、川や海へと流れ出ることが研究で確認されています。

環境中に放出されたマイクロファイバーは汚染物質を吸着しやすく、海洋生物が誤って摂取することで食物連鎖に入り込みます。最終的には魚介類を通じて人体に取り込まれる可能性も指摘されています。

私たちができること:洗濯ネットや専用フィルターの活用、洗濯回数を減らす、衣類を長く大切に使う、といった取り組みが、マイクロプラスチックの流出量を減らすことにつながります。


参考:MUFGファースト・センティア サステナブル投資研究所「マイクロファイバー:繊維製品による見えない環境汚染」


まとめ

マイクロファイバーは、1960年代の日本で生まれた技術を源流に持つ、合成繊維の傑作です。髪の毛の100分の1という超極細の構造が生み出す吸水性・速乾性・集塵力は、タオルから掃除クロス、衣類、寝具まで、あらゆるシーンで活かされています。

一方で、洗濯の際に放出されるマイクロプラスチック問題は、現代の繊維産業が向き合うべき課題でもあります。素材の便利さと環境への影響を両方理解しながら、賢く、長く使っていくことが大切です。

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