生地はどうやって来るのか? – 海外の布地業界における流通の仕組み

Shop Manager
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メーカーやディストリビューターとの契約には審査があり、事業の存在が証明されてはじめて契約が結ばれます。

メーカー、ディストリビューター、小売店。生地はどこから来るのか?

海外の生地メーカーのウェブサイトを眺めていると、「Wholesale Only(卸売専用)」「Authorized Retailers(正規小売店)」「Distributor(ディストリビューター)」といった言葉が目に入ることがあります。でも、これらがそれぞれ何を意味するのか、どんな関係にあるのかは、なかなか直感的にはわかりにくいですよね。今回は、海外の布地業界における流通の仕組みをわかりやすく解説します。また、「海外のネットショップで生地を買って日本で転売する」というやり方が、正規の仕入れビジネスとどのように根本的に異なるかについても、はっきりと整理したいと思います。


生地が私たちの手元に届くまで ── 流通の全体像

生地には、いくつかの「手」を渡って私たちのもとに届くものがほとんどです。大まかなルートはこのようになっています。

メーカー(Manufacturer)

ディストリビューター(Distributor)

小売店(Retailer)

エンドユーザー(私たち消費者)

ただし、これはあくまでも「典型的なルート」のひとつ。実際には、メーカーが直接小売店に卸すケースも多く、業界や企業によってルートは様々です。それぞれの役割を順番に見ていきましょう。

メーカー(Manufacturer)とは

生地を実際にデザイン・製造販売する会社です。アメリカのキルティング生地業界で言えば、Riley Blake DesignsやModa Fabricsといったブランドがこれにあたります。彼らは生地そのものを作り、デザイナーとコラボレーションしながらコレクションを発表します。

メーカーが生地を作るといっても、ほとんどは「ファブレス」です。生産自体は、他国(往々にして東南アジア)の工場で行なっています。

多くのメーカーは「ホールセール(卸売)専門」の立場をとっており、個人の消費者には直接販売しません。たとえばModa Fabricsについては、業界誌LikeSewがこう説明しています。

“Moda doesn’t sell directly to consumers, so it won’t compete with your business.”

──(意訳)Modaは消費者に直接販売しないため、あなたのビジネスと競合することはありません。


LikeSew — 7 Best Wholesale Fabric Suppliers

これはビジネスとして非常に理にかなった姿勢です。メーカーが消費者に直接売ってしまうと、自分たちの製品を取り扱っている小売店と競合してしまう。それを避けることで、小売店との信頼関係が成立するわけです。

ディストリビューター(Distributor)とは

メーカーと小売店の間に入り、生地を大量に仕入れてから小売店へ供給する会社です。アメリカのキルティング業界では、Checker Distributors、EE Schenck、Brewer Quilting and Sewingといった会社が代表的なディストリビューターとして知られています。

“Quilt fabric distributors play a crucial role in the quilting supply chain by sourcing fabrics from manufacturers and supplying them to retailers, quilting shops, and individual quilters.”

──(意訳)キルト生地のディストリビューターは、メーカーから生地を仕入れ、小売店やキルトショップ、そして個人のキルターへ届けるという、流通の重要な役割を担っています。


F&A Fabrics — Top 10 Quilt Fabric Distributors

ディストリビューターは単純な「中間業者」ではありません。大量の在庫を管理し、小売店からの注文に素早く対応するための倉庫を持ち、場合によってはメーカーとの交渉窓口にもなります。小売店にとっては「頼れるパートナー」的存在です。

なお、国や地域によって「ディストリビューター」と「ホールセラー(卸売業者)」の定義が微妙に異なることもあります。ビジネス情報サイトSortlyはこのように整理しています。

“A distributor works with manufacturers to distribute products along the supply chain, sometimes to dealers, sometimes to retailers, and sometimes, directly to the consumer. […] A wholesaler only buys goods wholesale, then sells them in smaller quantities. Wholesalers don’t have contracts with manufacturers and usually serve retailers in a limited area.”

──(意訳)ディストリビューターはメーカーと協力して流通を担い、ディーラー・小売店・消費者など様々な先へ製品を届ける。一方ホールセラーは卸値で仕入れたものを小分けして販売するだけであり、メーカーとの正式な契約は持たず、対応エリアも限定的なことが多い。


Sortly — Dealer vs. Distributor: A Guide to Vendor Types

小売店(Retailer)とは

消費者に直接販売する最前線の存在です。実店舗のキルトショップ、生地専門のECショップなどがこれにあたります。小売店はメーカーまたはディストリビューターと卸売契約を結んでいて、それによって生地をホールセール(卸売価格)で仕入れることができます。

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小売店の「仕入れ」── 2つのルート

小売店がどのように生地を仕入れるか、大きく分けると「メーカー直仕入れ」と「ディストリビューター経由の仕入れ」の2パターンがあります。それぞれに長所と短所があります。

パターン1:メーカーから直接仕入れる(Direct from Manufacturer)

小売店がメーカーと直接契約を結び、生地をメーカーから直接仕入れるルートです。間にディストリビューターが入らないぶん、仕入れコストを抑えやすいというメリットがあります。ただし、大抵は「最低注文数量(MOQ: Minimum Order Quantity)」が大きく設定されており、ディストリビューター向けの卸価格とは別の小売店向けの卸価格が設定されています。新規の小規模ショップにとってはハードルが高いこともあります。

たとえば Robert Kaufman Fabrics は、1942年創業のメーカー兼ホールセール・コンバーター(布地を仕入れてデザインを加えて卸す会社)として知られていますが、その取引先は小売店・アパレルメーカー・ホームデコ事業者など、ビジネス顧客に限定されています。

PROFILE

Robert Kaufman Fabrics
1942年創業。ロサンゼルス本拠のファミリービジネス。キルティング生地・ファッション生地・ユニフォーム生地などを製造・卸売する。「Kona Cotton」シリーズをはじめ、日本の生地ファンにも親しみのあるコットン生地を多数展開している。
公式サイト:robertkaufman.com

パターン2:ディストリビューターを通して仕入れる

多くの小売店が実際に利用しているルートです。ディストリビューターはすでにさまざまなメーカーの生地を在庫として持っているため、小売店は「1社との取引で、複数ブランドの生地をまとめて注文できる」という大きなメリットを享受できます。また、メーカー直仕入れより最低注文数量が少ない場合が多く、小規模なショップでも参入しやすいでしょう。(※小売店から早期予約をとってから在庫発注するので、常に在庫を持つとは限りません)

“Checker Distributors has over 125,000 products to choose from. You can offer your customers a wide variety of items at your store if you decide to work with Checker Distributors. They also have some of the most popular fabric brands to choose from, including Robert Kaufman, Hoffman, Marcus Fabrics, Wilmington Prints, Timeless Treasures, Riley Blake, Maywood Studio, and many more.”

──(意訳)Checker Distributorsは12万5千点以上の商品を取り揃えており、Robert Kaufman、Hoffman、Riley Blake、Maywood Studioなど人気ブランドを幅広くカバーしている。


LikeSew — 7 Best Wholesale Fabric Suppliers

Checker Distributorsは1948年創業のファミリービジネスで、「WHOLESALE ONLY(卸売専用)」「100% COMMITTED TO INDEPENDENT BUSINESSES(独立系ショップへの全力サポート)」を掲げています。このような専業ディストリビューターは、小規模な独立系ショップにとって欠かせない存在です。

国・地域別ディストリビューターという仕組み

メーカーによっては、各国・各地域に「正規ディストリビューター(Authorized Distributor)」を設けているケースがあります。たとえばRiley Blake Designsはオーストラリアにおける正規ディストリビューターとしてMillhouse Collectionsを指名しており、オーストラリアの小売店はこのルートを通じてRiley Blake生地を仕入れます。

“Millhouse Collections are the Australian distributors for Riley Blake Designs, Penny Rose Fabrics, Sue Daley Designs, Soak, It’s Sew Emma and many more. If you are interested in stocking any of these products please send a wholesale registration through to our team.”

──(意訳)Millhouse CollectionsはRiley Blake Designsほか複数ブランドのオーストラリア正規ディストリビューターです。取り扱いにご興味のある方は、ホールセール登録申請をお送りください。


Millhouse Collections — About Us

このような「地域別正規ディストリビューター」の仕組みは、メーカーが世界各地の市場を整然と管理するための方法でもあります。特定地域では特定のディストリビューターだけが正規に扱える「排他的流通権(Exclusive Distribution Rights)」が与えられることもあります。

→商用利用OKのかわいいUSAコットンあります・輸入生地のオンラインショップ

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「卸売口座」を開設するということ ── ビジネスとしての関係構築

メーカーやディストリビューターから生地を仕入れるには、「ホールセールアカウント(Wholesale Account)」の開設が必要です。これは単なる会員登録ではありません。

申込の際には、正規の事業者であることの証明(営業許可証・税番号・ビジネスライセンスなど)が求められることがほとんどです。「個人が趣味のついでに少し売る」というレベルでは通常認められず、事業としての実態が問われます。アカウントが承認されてはじめて、卸売価格での購入が可能になります。

“New England Quilt Supply is wholesale only, and as such we only sell to businesses.”

──(意訳)New England Quilt Supplyはホールセール専門であり、法人・事業者にのみ販売しています。


New England Quilt Supply — 公式サイト

また、メーカーと小売店の関係は単なる「売り買い」ではありません。メーカーの新コレクションの情報を先行して受け取り、適切なタイミングで発注し、お客様に提案する ── そういった継続的な関係が、正規の仕入れビジネスの本質です。

コラム:Maywood StudioとEE Schenckの関係
Maywood Studioは、100年以上の歴史を持つホールセール・ディストリビューター「EE Schenck Company」の一部門です。Maywood Studioの生地はEE Schenckをはじめとする正規ディストリビューターを通じてのみ購入が可能で、世界中の独立系キルトショップ・クラフトショップに供給されています。メーカーとディストリビューターが同一グループ内にある「垂直統合」の好例といえます。

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「海外ECで買って転売」と「正規仕入れ」── 根本的な違い

海外の生地ECショップ(Fabric.comや個人ショップなど)で生地を購入し、それを日本国内で転売する ── こうした手法をとっている方が一定数いることも事実です。しかし、これは「正規の仕入れビジネス」とは根本的に異なります。何が違うのか、整理してみましょう。

価格構造の違い

海外ECショップで一般消費者向けに販売されている生地は、すでに「小売価格(Retail Price)」が適用されています。正規の小売店がホールセールで仕入れる価格(卸売価格)に比べると、はるかに割高です。これを転売しようとすると、そもそもの仕入れコストが高すぎて、利益を出しながら適正価格で販売するのが構造的に難しくなります。よって、海外ECショップからの転売の場合、大抵はセール品を購入して転売しています。

“Buying wholesale means you get a reduced price per yard but you do have to buy a minimum amount of fabric in order to get that price.”

──(意訳)ホールセールで仕入れれば1ヤードあたりの価格は下がるが、そのためには一定量以上をまとめて購入する必要がある。


StartUp FASHION — What You Need to Know About Fabric Sourcing: Retail vs Wholesale

「グレーマーケット」という問題

メーカーが認めていない流通ルートで正規品が流れることを「グレーマーケット(Gray Market)」と呼びます。海外ECで購入した生地を日本で転売することは、まさにこれにあたる可能性があります。

“Gray market goods are new items that are sold legally but outside authorized distribution channels.”

──(意訳)グレーマーケット商品とは、法律的には合法であっても、正規の流通チャンネル外で販売される新品のことを指す。


Red Points — What is the gray market, and is it legal?

グレーマーケット取引は違法ではないケースも多いですが、ブランド側の管理外の流通であり、倫理的な問題をはらんでいます。メーカーが地域別に正規ディストリビューターを設けて流通を管理しているのに、その外側で商品が流れれば、正規の販売網が損なわれます。

“The grey market involves goods sold by unauthorized resellers. […] While the black market is illegal, the grey market is simply unethical.”

──(意訳)グレーマーケットは認可されていない転売業者による販売を指す。ブラックマーケットが違法であるのに対し、グレーマーケットは「非倫理的」と表現されるものだ。


Eyeful Media — How to Address the Grey Market

「正規代理店・正規小売店」としての社会的信頼

正規の卸売ルートを持つショップは、メーカーやディストリビューターとの長期的な信頼関係のうえに成り立っています。新コレクションの先行情報を受け取る、プロモーション素材のサポートを受けられる、欠品時に優先的に対応してもらえる ── こうした実際のビジネス上のメリットは、正規の仕入れ先との関係なしには得られません。

海外ECで買ったものを転売する行為は、その構造上、こうした関係とは根本的に切り離されています。単発的な「物の動き」であり、メーカーやブランドとの継続的なパートナーシップとは似て非なるものです。

まとめると:転売と正規仕入れの主な違い

仕入れ価格:転売は小売価格からのスタート。正規仕入れは卸売価格。
メーカーとの関係:転売は無関係。正規仕入れは公式パートナーシップ。
安定供給:転売は在庫状況次第で不安定。正規仕入れは継続的な供給が見込める。
流通上の位置づけ:転売はグレーマーケットとなりうる。正規仕入れは公式チャンネル内。
情報・サポート:転売では受けられない。正規仕入れでは新コレクション情報等が得られる。

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生地の流通を知ることが、選ぶ目を育てる

メーカー、ディストリビューター、小売店 ── それぞれが役割を持ち、つながりながら、私たちの手元に生地が届くまでの道すじを作っています。この流れを理解すると、好きなブランドの生地を扱っているお店が「どういう経緯でその生地を取り扱っているのか」が想像できるようになります。

そして、正規の仕入れルートを通じて生地を取り扱っているショップは、単に「商品を売っている場所」ではありません。メーカーとの信頼関係のうえに立ち、品揃えを継続的に更新し、お客様に最良の選択肢を提供しようとしている存在です。

jumble shop oneも、海外の生地メーカーおよびディストリビューターとの取引に基づいて、生地を厳選してお届けしています。生地の背景にある流通の仕組みを少しでも知っていただけると、お買い物がまた違って見えてくるかもしれません。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

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