上場企業の決算資料から読む、手づくり市場のいま

 

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手芸人口の拡大や入口として大きな力を持つ大手企業の動向はいつも気にして見ています

手芸チェーンは今どうなっている? クラフトハートトーカイの決算資料から読む、手づくり市場のいま

パンドラハウス、クラフトハートトーカイ、ユザワヤ——日本の手芸好きにはおなじみの三大チェーンですが、そのうち上場しているのはパンドラハウス(イオン株式会社)とクラフトハートトーカイを展開するジャパンクラフトホールディングス株式会社の二社だけです。ユザワヤ商事株式会社は非上場のため、詳細な財務情報は公開されていません。

上場企業は決算資料を公開しているので、業界の動きを読む貴重な窓口になります。2026年5月に公表されたジャパンクラフトホールディングスの2026年6月期第3四半期決算補足説明資料を見ると、手芸チェーンをとりまく状況の変化がじつに興味深く見えてきました。数字が並ぶ資料ですが、ファブリックや手づくりが好きな目線で読むと、これがなかなかドラマチック。今回はその内容をかみ砕いてご紹介します。


ジャパンクラフトホールディングスってどんな会社?

1961年に「藤久株式会社」として愛知県で創業し、手芸専門店のチェーン展開を1968年に開始。その後グループ再編を経て、2022年に現在の「ジャパンクラフトホールディングス株式会社」となりました。東証スタンダードおよび名証プレミアに上場(証券コード:7135)しており、本社は名古屋市にあります。

グループの主な事業

グループは大きく「小売事業」と「出版・教育事業」の二本柱で構成されています。小売事業の中核が、全国に店舗を持つ手芸専門店「クラフトハートトーカイ」。2022年7月に株式交換により子会社化した株式会社日本ヴォーグ社では出版・教育事業を手掛け、手芸・ハンドメイドに関する書籍出版や通信教育、さらにカルチャースクール「ヴォーグ学園」を運営していました(後述しますが、こちらは直近に大きな動きがありました)。売上構成比は小売事業が約8割、出版・教育事業が約2割です。

「手づくり」を通して豊かな心を育み幸せを紡ぐ企業グループへ


ジャパンクラフトホールディングス グループ経営ビジョン

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第3四半期の業績:不採算店舗を減らし、売上・利益を改善

今回の決算資料で最も印象的だったのは、「不採算店舗を減らし収益を改善している」という事実です。小売店舗数は2024年6月期第3四半期の279店から、2026年6月期第3四半期には212店へと、2年間で約70店減少しています。

ところが、一店舗あたりの数字を見ると様相が変わります。一店舗あたりの売上は29.3百万円(2024年6月期3Q)から34.3百万円→36.5百万円と着実に伸び、利益も赤字から黒字へと転換。来店客数も一店舗あたり17,900名から20,200名に増えています。不採算店を閉じながら、残った店舗の質を高めていく——まさに「選択と集中」の成果が数字に表れています。

グループ全体の損益も大きく改善

グループ連結の当期純利益は、2024年通期で約20億円の赤字、2025年通期で約2.6億円の赤字でしたが、2026年6月期第3四半期はついに約1.9億円の黒字に転換しました。通期でも約1.8億円の黒字を見込んでおり、構造改革が実を結びつつある段階と読めます。

店舗数減少も、一店舗売上・利益は増加。順調に増収・増益


2026年6月期 第3四半期 決算補足説明資料(ジャパンクラフトホールディングス)

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手芸トレンドが業績を動かしている——編み物ブーム・シールブーム

決算資料の「各社取組み」のページが、手づくり好きとしては特に読み応えがありました。業績改善の背景には、具体的なトレンドへの対応があります。

編み物ブームは続いている

資料では「編み物関連商品は引き続き好調」と明記されており、国内外の毛糸を扱うポップアップショップ「旅する毛糸店」が各地で好評を得ているとのこと。「花束のようなブランケットが編める毛糸」といったトレンドに即した自社ブランド毛糸も好調で、このブームがかなりのけん引力になっていることがわかります。

また出版事業でも、かぎ針編みの入門書が発売3ヶ月で3刷を重ねる好調ぶり。手芸チェーンと出版・教育が同じグループにある強みが、このジャンルでは大きく発揮されています。

シールブームにも即応

そして面白いのが「シールブーム」への対応です。SNSで流行した”接着剤で立体的なシールを手作りする”という手法に着目し、BtoB(企業間取引)でトレンドのシールを確保して売上につなげたとのこと。手芸の定義が広がっていることを感じさせる動きです。手芸チェーンがシールの供給元になる——面白い視点ですね。

入園・入学需要の縮小という課題

一方で課題も正直に書かれていました。手芸チェーンの定番需要であった「入園・入学準備」が縮小傾向にあるというのです。少子化の影響がここにも及んでいます。これに対して同社は「いちご」をテーマにしたキャンペーンを店舗・ECで展開し、入園入学以外の購買機会を作ることで売上確保を図っています。

入園入学準備に伴う需要が縮小傾向の中、「いちご」をテーマとしたキャンペーンを店舗・ECで実施。入園入学以外の施策展開で売上確保を狙う


2026年6月期 第3四半期 決算補足説明資料(ジャパンクラフトホールディングス)

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当店でも「いちご」を検索される方が急増していて、なんでだろうと思っていたところです。
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ヴォーグ学園の譲渡——そして次の一手

今回の資料でもうひとつ大きなニュースとして書かれていたのが、カルチャースクール「ヴォーグ学園」の全株式を、シニア向けメディア・コミュニティを展開する株式会社ハルメクへ譲渡したという事実です(2026年4月30日発表)。

ヴォーグ学園は東京・横浜・名古屋・大阪の4校とオンラインでハンドメイドを学べるスクールで、手芸ファンにはよく知られた存在です。グループからは離れますが、「戦略的パートナー」として引き続き連携するとのこと。ハルメクが持つシニア層・50代以降の女性顧客へのアプローチを、ジャパンクラフト側も活用する狙いがあると読めます。

手芸・手づくりを楽しむ層と、ハルメクが得意とするアクティブシニア層には大きな重なりがあります。この連携がどんな形でユーザーに届くか、今後が気になるところです。

また出版・教育事業では、自社ECサイト「手づくりタウン」で有料会員制度「手づくりタウンクラブ」をスタート。さらに2026年1月には「手芸検定」を新設し、早期申込キャンペーンで受験者数を増やすなど、コミュニティと資格という二つの軸で顧客との関係を深める動きも進んでいます。


手芸チェーンの変化は、手づくり文化の変化

決算資料というと難しく聞こえますが、読んでみると「いま手芸チェーンで何が売れているか」「どんな人が手芸店に来ているか」がリアルに見えてくる資料でもあります。

編み物ブームの継続、シールという新ジャンルの台頭、入園入学需要の縮小、シニア層へのアプローチ強化——これらはどれも、手づくりを楽しむ人たちの裾野と多様性が変わってきていることを示しています。「ソーイング好き」だけではなく、さまざまな入り口から手づくりに親しむ人が増えているということでしょうか。

jumble shop oneが取り扱う海外ファブリックも、こうした「手づくり文化の広がり」の中にあります。どんな布で、何を作りたいか——その答えは今もどんどん多彩になっています。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

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