MeMadeMayとは? 「作った服を、ちゃんと着る」から始まった世界的ムーブメント
毎年5月になると、世界中のソーイング愛好家のSNSが「#MeMadeMay」というハッシュタグで賑わいます。合言葉は「自分で作った服を、ちゃんと着て過ごす」。そのシンプルなルールが、なぜここまで世界中の人を惹きつけるのでしょうか。始まりのエピソードから、現在の広がりまでをご紹介します。
きっかけは、たった一人の「寒い3月」の実験だった
MeMadeMayの始まりは、2010年。当時スペインのバルセロナに暮らしていた洋裁の先生であり文筆家でもあるゾーイ・エドワーズ(Zoe Edwards)さんの、ごく個人的な挑戦でした。数年かけて自分の服を作り続けるうちに、気づけばクローゼットの中身が「ワードローブ」と呼べるくらいの分量になっていたそう。そこで彼女は、下着・タイツ・靴下・靴以外はすべて手作りの服で過ごすという挑戦を、3月にたった一人で始めます。
結果は「楽しくて学びも多かったけれど、とにかく寒かった」というもの。そこで彼女は、次はもっと暖かい季節にやってみようと考え、ブログで「一緒にやりませんか」と呼びかけます。それが5月でした。数人集まれば十分、と思っていたところ、なんと70人近くが参加を表明。ここから、MeMadeMayは個人の挑戦から、世界中の仲間と支え合うコミュニティイベントへと姿を変えていきました。
彼女がこの挑戦にたどり着いた背景には、ロンドンのアパレル企業で働いていた頃に大量生産・大量廃棄の現場を目の当たりにした経験や、その後イギリスの繊維リサイクル団体TRAIDで、寄付された生地や不要な衣類から新しい服を仕立てる仕事に携わった経験があるといいます。また、1年間すべて自作の服だけで過ごしたカナダのアーティスト、ナタリー・パーシュヴィッツ氏の「Makeshift」プロジェクトからも着想を得たそうです。
「MMMは “作る” ためのチャレンジではなく、自分の手作り服をワードローブとの関係を見つめ直すための挑戦なのです」
PROFILE
ゾーイ・エドワーズ(Zoe Edwards)/洋裁の先生・文筆家。2010年にMeMadeMayを考案。2021年には服を直しながら長く大切に着るための本『Wear It, Mend It, Love It』を出版。サステナブルな暮らしをテーマにしたポッドキャスト「Check Your Thread」のホストも務める。
ブログ:So, Zo… What Do You Know?
ルールは「自分で決めていい」というやさしさ
「世界的なチャレンジ」と聞くと厳しそうに思えますが、MeMadeMayがこれほど愛されている最大の理由は、統一された厳しいルールがなく、「自分への誓い(Pledge)」を自分自身で設計できる自由さにあります。基本のガイドラインは、とてもシンプルです。
基本のガイドライン
5月の1ヶ月間、自分で作った服(Me-Made)を着用すること。「どのくらいの頻度で」「何を」着るかは、自分のワードローブに合わせて自由に決めること。4月中〜5月が始まる前に、SNSやブログなどで自分の誓いを宣言すること。そして「#MeMadeMay」(その年の西暦を加えた「#MeMadeMay2026」なども使われます)をつけて、コーディネート写真をSNSに投稿すること。この4つが軸になっています。
誓いのレベルは人それぞれ
「週に1回、手作りのスカートを履いて出かける」という初心者向けの目標から、「下着と靴下以外、毎日フル手作りコーデで過ごす」という上級者向けの挑戦まで、レベルはさまざま。ゾーイさん自身も「これは他の参加者と競うものではなく、あくまで個人の挑戦」だと繰り返し発信しており、手作りの服が1着しかない人でも、その1着をどう活かして着るかを工夫すれば、それだけで立派な参加になると強調しています。
なぜ、これほど世界中で熱狂的なムーブメントになったのか
①「作った服を実際に着る」というリアルな達成感
ソーイング愛好家には、「作ること自体が楽しくて、完成した服をクローゼットに眠らせてしまう」という現象がよく起こります。MeMadeMayは、そうした服に光を当て、日常のワードローブとしてどれだけ機能するかを試す絶好の機会になります。実際に袖を通すことで、「この形は動きやすい」「この生地はシワになりやすいから次はこうしよう」といった、次の制作に活きる気づきが生まれます。
②ポジティブで温かいグローバルコミュニティ
SNS上の「#MeMadeMay」のタグの中は、世界でも指折りの穏やかでポジティブな空間だとよく言われます。体型、年齢、性別、国籍、洋裁の技術レベルにかかわらず、参加者同士がお互いの作品を称え合う文化が根づいており、「これ自分で縫ったんです」と言いづらい環境にいる人でも、ここに来れば世界中の仲間から「素敵!」「その型紙どこの?」と声をかけてもらえます。
③「スローファッション」への共感
大量生産・大量消費のファストファッションへのアンチテーゼとして、「時間をかけて仕立てた、世界に一着だけの服を長く大切に着る」というサステナブルな生き方を、おしゃれに、楽しく表現する場としても機能しています。参加者の多くは「#slowfashion」「#sewcialists」といった関連タグも合わせて使い、より大きなムーブメントの一員であることを表現しています。
④世界中の「リアルな着こなし」が最高の参考書に
モデルが着る型紙本の写真ではなく、さまざまな体型のセウィストたちが日常着として着こなしている写真が、世界中から数万件規模で集まります。「その型紙、普通の大人が着るとこんなに素敵になるんだ」という発見の連続で、見ているだけでも制作意欲が刺激されます。
5月を超えて広がる、手作りを楽しむ輪
MeMadeMayがあまりに好評だったため、5月が終わった後も日常的に手作り服を着る「#MeMadeEveryday」や、自作のニットを着る「#KnitsInTheWild」など、派生タグが1年を通じて賑わっています。今では毎年、世界中の何千もの投稿が「#MeMadeMay」のタグに集まり、次の年の参加者を後押しする循環が生まれています。
ソーイングというどこか孤独になりがちな作業を、世界中の仲間とつながる楽しいコミュニケーションへと変えたのが、MeMadeMayというムーブメントです。今年の5月はもう終わってしまいましたが、来年に向けて少しずつ「自分だけのワードローブ」を育てていくのも、素敵な過ごし方かもしれません。
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