「Make it British ポッドキャスト」と「British Brand Accelerator」— 英国ものづくりを支える声とコーチングの場
「イギリス製」という言葉には、どこか信頼と誇りの響きがあります。けれどその裏側には、工場を探し、価格を交渉し、試行錯誤を重ねるブランドオーナーたちの姿があります。そんな作り手たちに寄り添い、英国製造業の今を伝え続けているのが「Make it British ポッドキャスト」と、その運営者ケイト・ヒルズさんが主宰するコーチングプログラム「British Brand Accelerator」です。今回はこのふたつについて詳しくご紹介します。
Make it Britishとケイト・ヒルズという人
Make it Britishは2011年4月、ケイト・ヒルズさんによって設立されました。バーバリーやマークス&スペンサーといった大手ブランドでバイヤー・デザイナーとして25年近く働いてきたケイトさんは、生産拠点が次々と海外へ移っていく現場を目の当たりにし、危機感を抱いたといいます。1990年代には自身でリサイクル素材を使った衣料ブランドとミニ工場を運営していた経験もあり、英国内でものづくりを続けることの価値を誰よりも実感していました。
Make it Britishはもともと一つのブログとして始まりましたが、現在では英国ブランドのディレクトリ、職人技を紹介する読み物、そして製造業者を探すブランドのためのリソースへと成長しています。展示会「Make it British Live!」には17か国から5,000人以上の来場者が集まるまでになり、英国製造業を支える一大プラットフォームとなっています。
海外の大手ブランドで生産地が次々と国外へ移る様子を見て、英国内でものづくりを続ける価値を伝えたいと考えるようになった、とケイトさんは振り返っています。
ポッドキャストが伝えるもの
「Make it British ポッドキャスト」は、英国のブランドやメーカーにスポットライトを当て、その舞台裏を紹介する番組です。2026年時点で配信回数は300回を超え、毎週更新が続く人気シリーズとなっています。1エピソードはおよそ30分以内とコンパクトで、通勤や家事の合間にも聴きやすい長さが特徴です。
エピソードの特徴
内容は多岐にわたります。英国ブランド創業者へのインタビューや工場見学(ファクトリーツアー)回のほか、製造コストの内訳、ブレグジット後の原材料価格の高騰、サステナブルな工場の見極め方など、実務に直結するテーマも数多く扱われています。ラナプラザ工場崩落事故から10年の節目には過去のエピソードを振り返るなど、業界の倫理的な課題にも正面から向き合う姿勢が見られます。
さらにケイトさんは、非公開限定配信の「British Brand Bedrock」というもう一つのポッドキャストも運営しています。こちらは英国製ブランドの立ち上げや成長にまつわる、よくある質問30以上に答える内容で、購読者だけがアクセスできる仕組みになっています。
British Brand Acceleratorという学びの場
ポッドキャストの中でもたびたび紹介されているのが、ケイトさんが主宰するグループコーチングプログラム「British Brand Accelerator」です。英国内でアパレル・雑貨・ホームウェアなどの製造を目指す中小ブランドオーナーを対象に、開業前の段階から売上が数十万ポンド規模になったブランドまで、幅広い層が参加しています。
プログラムの中身
内容は月2回のライブワークショップやQ&Aセッション、コスト計算やテックパック・売上データなどを個別に添削してもらえる週次のフィードバック、そして非同期のボイスメッセージによるサポートなど多岐にわたります。テンプレートや原価計算ツールへのアクセスに加え、参加者の商品に合わせた英国内メーカーの紹介も受けられる点が特徴です。参加費用は一律公開されておらず、まず無料の個別相談を経てから案内される仕組みになっています。
海外工場との取引に不安を感じ、生産をゼロから見直していた参加者が、このプログラムに参加したことを人生で一番良い決断だったと語っています。
— Clare氏(Grow Wild Outdoorwear)/ British Brand Accelerator利用者の声より
過去には百貨店ハビタットのバイイングディレクターを務めていた人物がこのプログラムに参加し、外部からの客観的な視点を得られたことを高く評価するなど、業界経験者にも支持されています。運営元のMake it British Ltdは2011年の設立以来、これまでに数千のブランドの英国内製造をサポートしてきました。
まとめ
「Make it British ポッドキャスト」は、英国でものづくりを続ける人々の生の声を届けるメディアであり、「British Brand Accelerator」はその声を実際の行動につなげるための伴走プログラムです。国は違えど、ひとつひとつの製品にこだわりを持って向き合う姿勢は、私たちが日々ファブリックと向き合う仕事にも通じるものがあります。海外のものづくりコミュニティの動きを知ることは、自分たちの手仕事を見つめ直すきっかけにもなりそうですね。
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