世界中のニッターが集う編み物SNS「Ravelry」ってどんな場所?
編んだ作品の写真をどこに残していますか。使った毛糸、針の号数、次に編みたいもののメモ……。手を動かすことに夢中になるほど記録はどこかに散らばっていきます。海外には、そんな悩みを解決するために生まれた編み物・かぎ針編み専門のコミュニティサイトがあります。その名も「Ravelry」。今日は、縫い物好きの方にもきっと発見のあるこのサイトをご紹介します。
編み物好き夫婦が生んだ、「迷子にならない」ためのサイト
Ravelryが生まれたのは2007年、アメリカ・ボストンに暮らすジェシカとケイシーのフォーブス夫妻がきっかけでした。熱心な編み物ブロガーだったジェシカは、素敵なパターンや工夫を見つけても、後から「あれはどこで見たんだっけ」と探し回る日々に疲れていたそうです。当時のネット上の編み物情報は、無数のブログやフォーラムに散らばっていて、ひとつにまとめる場所がありませんでした。
Web開発の仕事をしていた夫のケイシーは、2007年の新年の抱負として「編み物のための整理整頓できる場所を作る」ことを決意。仕事の合間や週末を使って数ヶ月でサイトを組み上げ、100人にも満たない招待制のベータ版として公開しました。口コミで評判が広がると希望者が殺到し、夫婦は貯金を切り崩し、記念Tシャツを販売し、ファンからの寄付を受けながら、少しずつサイトを育てていったといいます。
“one of the world’s more successful deployments of Ruby on Rails technologies”
(世界でもっとも成功した実装例のひとつ)
当時は珍しかった技術で作られたサイトが、開発者コミュニティの間でも話題になったほど。ひとりの編み物好きの「困った」から始まったサイトが、今では世界的な規模のコミュニティに育っています。
サイトでできること——記録も、発見も、ひとつの場所で
マイノートブック:作品・毛糸・次にやりたいことを整理する
会員登録をすると、自分専用の「My Notebook」というページが持てます。ここには大きく3つの機能があります。ひとつは「プロジェクト」。完成した作品や作りかけの作品を、写真とともに記録できるページです。使ったパターン、針やかぎ針の号数、糸、進み具合、気づいたことなどをまとめて残せます。もうひとつは「Queue」。次に作りたいパターンを優先順位付きでリスト化し、必要な糸のメモも添えておける、いわば「作りたいものの予約リスト」です。そして「Stash」は、手持ちの毛糸を種類・重さ・色ごとに記録しておける、いわばデジタルの糸在庫台帳。どの棚にどの糸がどれだけあるかが一目でわかるので、新しく糸を買う前に「実は家にあった」を防いでくれます。
膨大な「パターン」と「糸」のデータベース
Ravelryのもうひとつの柱が、世界中のデザイナーや会員が投稿した編み方パターンのデータベースです。難易度やゲージ、使う糸の太さ、タグなどで絞り込んで検索でき、実際に編んだ人たちの写真や感想も見られるので、「このパターン、本当に自分でも編めそう」というイメージがつかみやすいのが特徴です。個人のデザイナーが自作パターンを直接販売できる仕組みもあり、ブログだけで細々と発表していた作り手が、Ravelryをきっかけに本格的なパターン販売を始めたという例も少なくありません。糸についても同様に、太さや素材、色展開、レビューがまとまったデータベースがあり、実店舗やオンラインで糸を選ぶ前の下調べとして活用されています。
フォーラムとグループ——趣味でつながる場所
Ravelryには技法やデザイナーごと、地域ごとにたくさんの「グループ」があり、その中でフォーラム(掲示板)を通じてやり取りができます。日本語で交流できるグループも存在するので、英語に自信がなくても参加のハードルは思うより低いかもしれません。
2020年時点でRavelryの登録者数は900万人近くにのぼるとされ、その後も増え続けています。サイトに広告を出せるのは毛糸や編み物道具に関わる事業者のみというルールがあり、創業当初からの「趣味の場を大切にする」という姿勢が今も貫かれています。
縫い物好きにとっても、ヒントになる場所
Ravelryは編み物とかぎ針編みに特化したサイトですが、その根っこにある発想は、これまでこのジャーナルでご紹介してきた海外の縫い物コミュニティの動きとよく似ています。「#MeMadeMay」のように自分の手作りを記録して発信する文化、作った人同士がゆるくつながっていく仕組み——手芸のジャンルは違っても、「作ったものを残し、同じものづくり好きとつながりたい」という気持ちは共通しているようです。
日本でも編み物雑誌「毛糸だま」がたびたびRavelryを紹介してきた経緯があり、日本のデザイナーの作品が英語表記でサイトに掲載されるなど、少しずつ橋渡しが進んでいます。手持ちの生地や毛糸をきちんと記録し、作りたいものを見える形にしておく——そんな習慣は、縫い物にもそのまま生かせそうです。
まとめ
ひとりの編み物好きの「散らばった情報を整理したい」という願いから始まったRavelryは、今や世界中の作り手が作品と道具を記録し、つながる場所に育ちました。もし編み物やかぎ針編みにも興味があれば、のぞいてみる価値のあるサイトです。そして、手持ちの生地や毛糸を記録し、次に作りたいものを思い描く楽しさは、きっと私たちの縫い物にも通じるはず。今日Stash整理を始めてみるのも、いいきっかけになるかもしれません。
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