海外の生地店・手芸店 – 閉店ニュースとSNSの声

Shop Manager
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ここ数年、手芸業界・生地業界では寂しいニュースが増えました

海外の生地店・手芸店が、静かに減っている。この数か月の閉店ニュースとSNSの声

国内だけでなく海外の生地屋さんや手芸店も苦しいらしい。そんな話はこの数年ずっと耳に入ってきます。では、ここ数か月は実際にどうだったのでしょうか。2026年10月21日の時点で、報道記事とそこに引用されたSNS投稿・掲示板の声をたどり、裏付けの取れたものを整理してみました。

先に整理しておくと、直近3か月(7月下旬以降)に報じられた閉店と、それより少し前に発表されて今も進行中の大きな動きとでは、分けて書いたほうが正確です。この記事もその順番で進めます。

 


この3か月に報じられた、閉店の知らせ

カナダ・アルモンテ:26年の実店舗を閉じ、オンラインへ

オンタリオ州アルモンテの生地店 Darrell Thomas Textiles は、10月24日(土)の午後5時に店舗を閉じます。10月20日に CTV News が伝えました。開業から26年。珍しい生地やデザイナーズファブリック、パターン、そして約5万個というボタンのコレクションで知られ、首都圏から車で通う常連もいたそうです。

閉店の理由として報じられているのは、米国の関税で国際販売のコストが上がり、売上にも影響が出ていること。そして、実店舗を維持する費用です。この店は米国・欧州・オーストラリアにも生地を発送してきたため、関税の影響を直接受けた形です。店舗は閉じても、オンライン販売は続きます。

“I have to do what I have to do.”

(やるべきことを、やるしかないのです。)


— 店主 Darrell Graham 氏/CTV News Ottawa

米国テキサス州:Facebookで告げられた「最後の営業日」

テキサス州のSpring・Klein地域にあった家族経営のキルト・生地店 Cupcake Quilts は、およそ11年の営業を経て閉店しました。店のFacebook投稿で8月12日に閉店を発表し、店頭での最終営業日は9月30日。地域メディアの Community Impact が、10月19日付で近隣の閉店店舗をまとめた記事の中で伝えています。生地、キット、パターン、糸、ギフトなどを扱っていたそうです。閉店の理由はこの記事では触れられていません。

大きなニュースにはならない小さなお店の閉店は、まず店自身のSNS投稿で知らされ、あとから地域メディアが拾う。そんな流れがこの例からも見えてきます。

英国ウルヴァーハンプトン:引退とともに閉じるミシン店

9月29日の Express & Star の記事によると、ウルヴァーハンプトンの Brewers Sewing Machines は68年の歴史に幕を下ろします。1958年の開業当時は市内にミシン関連の店が14軒ありましたが、いまはこの店が最後の一軒と見られているそうです。84歳のオーナー Kath Harvey さんは、閉店日を迎えるにあたって「複雑な気持ち」だと語っています。

こちらは経営難というより引退に伴う閉店です。ただ、同じ種類の店がひとつの街から消えるという意味では、他の例と重なって見えます。

 

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少し前に発表され、今も続いている大きな動き

ここからは、発表が5月下旬〜6月だったため3か月の枠からは少し外れるものの、店じまいそのものは今も進んでいる3つの例です。

オーストラリア:Lincraft が全店舗を閉め、オンライン専業へ

1938年にメルボルンの露店から始まった生地・手芸チェーン Lincraft は、6月中旬、残る実店舗を順次閉めてオンライン専業にすると発表しました。対象は豪州とニュージーランドの約28店舗、影響を受ける従業員は約300人。最盛期には67店舗を構えていたとされます。理由として挙げられたのは、買い物習慣の変化、運営コストの上昇、そして海外の低価格なネット販売との競争です。

“Lincraft is synonymous for fabric, but it’s probably also our greatest weakness”

(リンクラフトは生地の代名詞ですが、それは同時に、私たちのいちばんの弱みでもあるのでしょう。)


— 代表 John Maguire 氏/SmartCompany

発表の直後にはReddit上でも話題になりました。確認できたスレッドでは、閉店を惜しむ声がある一方で、「ここ最近は生地の品揃えが物足りなかった」という厳しい書き込みも目立ちます。残る大手の Spotlight だけになってしまうことへの不安を口にする人もいました。悲しみと不満が同じ場所に並んでいるところに、実店舗が置かれた難しさが表れているように思います。

カナダ・バンクーバー:Dressew Supply の閉店日が決まる

1961年創業、ダウンタウンの老舗 Dressew Supply は、2024年8月にSNSで建物の売却と最終的な閉店を発表していました。Daily Hive の5月26日付の記事では、建物の売却が今年5月に完了し、閉店日が2027年5月1日と正式に決まったと伝えられています。新しい所有者と1年間の賃貸契約を結んで営業を続けるため、当面は閉店セールも行わず、生地や副資材の補充を続ける予定だそうです。店側は「別の形で新しい居場所を見つけたい」との意向も示しています。

Daily Hive は、賃料や運営コスト、周辺の治安への懸念など、都市部の独立系店舗が抱える負担を背景として挙げています。一方、店は2024年の発表で、閉店は特定のひとつの理由によるものではないと述べていました。学生、映画の衣装部門、ダンススタジオ、コスプレイヤー、プロのデザイナーまでが通った場所だったと紹介されており、生地店が単なる売り場ではなく、街の創作の拠点でもあったことが分かります。

カナダ・ニューウェストミンスター:Fabricland の賃貸契約が更新されず

カナダ最大手の生地チェーン Fabricland(1968年にトロントで1号店を開き、現在は100店舗超)のニューウェストミンスター店は、6月20日が最終日と報じられました。理由は経営不振ではなく、建物の所有者が別の計画を持っていて賃貸契約が更新されなかったこと。会社は新しい場所を探すとコメントしています。チェーン店でも、立地の条件ひとつで地域から店が消えることがあるという例です。

 

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背景にあるもの:関税、JOANN閉店のその後、そして「触れない」問題

関税と、少額輸入の免税措置の終了

関税の影響は、2025年の時点から米国の手芸業界で繰り返し語られてきました。Reason の2025年8月の記事では、テネシー州の毛糸店オーナーが「仕入れの9割以上が関税の影響を受けている」と話し、英国の Wool Warehouse が米国向けの出荷を止めたことも紹介されています。同じ2025年8月には、低額の輸入品を関税なしで送れた免税措置が終了し、小さな注文にも国ごとの関税がかかるようになりました。業界団体 Craft Industry Alliance の年末調査は、2025年を「関税の年」と表現しています。

今年10月のアルモンテの例は、その影響が米国内の店だけでなく、米国へ生地を送ってきたカナダの店にも及んでいることを示しています。

JOANN の閉店は「過去の話」だが、余波は続いている

米国最大級の手芸チェーン JOANN が全店閉鎖を発表したのは2025年2月で、閉店は同年中に終わっています。つまり直近のニュースではありません。ただ、その後の変化はいまも語られています。業界向けの記事は、個人経営の生地店や布の専門店に、衣料用の生地を求める問い合わせが以前より増えていると伝えています。行き場を失った客を受け止める一方で、仕入れの難しさや関税の負担を同時に抱えるのが、いまの個人店です。

生地は「触って選ぶ」もの

Lincraft の閉店を伝えた記事には、豪州の素材クリエイターの声も紹介されています。リボンやボタンを生地に当てて色や風合いを確かめ、店員に使い方を尋ねられる場所がなくなる、という惜しみ方です。オンライン販売も、動画で生地を伸ばして見せるなど工夫を重ねてはいますが、手触りや厚みを確かめる体験は、まだ店頭にしかないものです。

とはいえ、暗い話ばかりではありません。Lincraft の閉店後の動きを追った記事では、スマホから離れたい趣味層に向けた機会はまだあると、クラフト業界のブランド関係者が語っています。

 

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SNSでは何が語られているのか

報道を通じて確認できたSNS上の動きは、大きく3つに分けられます。ひとつめは、店自身が出すFacebook投稿での告知(Cupcake Quilts、Dressew)。ふたつめは、地域のFacebookグループやRedditでの常連の反応(Fabricland)。みっつめは、閉店の理由や店の評価をめぐる少し踏み込んだ議論(Lincraft)です。

Fabricland ニューウェストミンスター店の閉店では、地域のFacebookグループに「長く続いた店がなくなって悲しい」という書き込みが並び、閉店前に買い溜めをする人や、連日とても混んでいるという報告もありました。Redditの地域掲示板には、次のような投稿があったと Daily Hive が紹介しています。

“No more local place for notions and fabric”

(もう、近所に副資材と生地を買える場所がなくなってしまう。)


— Redditユーザーの投稿/Daily Hive より

この声から分かるのは、惜しまれているのが「思い出の場所」というだけではないことです。糸やファスナー、ボタンといった副資材をちょっと買い足せる店が近所にあること自体が、暮らしの中のインフラになっていた。その実用的な不便さが、投稿の背後に見えます。

この記事の調べ方について:ここで紹介したSNS投稿や掲示板の声は、報道記事に引用・紹介されたものや、保存された投稿の記録をもとにしています。投稿は削除や編集が行われる場合があります。

 

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実店舗が減る世界で、布を選ぶということ

今回たどった例を並べてみると、店が閉まる理由はひとつではありません。関税、家賃や賃貸契約、運営コストの上昇、ネット販売との競争、そして店主の引退。どれも「手仕事への関心が薄れたから」とは違う種類の理由です。実際、Darrell Thomas Textiles や Lincraft のように、店舗を閉じてもオンラインで続ける店は少なくありません。

それでも、布を触って選べる場所と、使い方を相談できる人が、街から少しずつ減っていくことには変わりありません。ウェブで布を選ぶ人が増えるほど、写真や説明で厚みや手触り、色をどう伝えるかが、売る側にも選ぶ側にも大切になっていきます。海外の布をオンラインで届ける当店にとっても他人事ではない話です。


参考にした記事

Almonte fabric shop closing storefront after 26 years, moving online as tariffs squeeze business(CTV News Ottawa、2026年10月20日)
4 local businesses recently closed in Spring-Klein area(Community Impact、2026年10月19日)
Much-loved Wolverhampton sewing machine shop closes after nearly seven decades(Express & Star、2026年9月29日)
The cost of craft: Tariffs bite from Assam to Appalachia(Garland)
Craft retailer Lincraft to shut its remaining stores and sell online only(Garland、2026年6月25日)
Despite Lincraft stores closing, demand for craft is still growing(SmartCompany)
Australian/New Zealand craft news: Lincraft Closing(Redditスレッドの保存記録、2026年6月16日)
Dressew Supply confirms sale of Downtown Vancouver building and permanent closure date(Daily Hive、2026年5月26日)
‘Heartbroken:’ Vancouver’s Dressew announces impending closure(CTV News、2024年)
Popular New Westminster fabric store is closing and customers are upset(Daily Hive、2026年6月15日)
Trump’s Trade War Is Crushing American Crafters(Reason、2025年8月28日)
With Joann stores closing, customers mourn retailer’s loss(NPR、2025年2月28日)
A Fabric Sourcing Guide for Indie Retailers(Art Fair Insiders)

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