触れた瞬間、手放せなくなる。「Cuddle」という生地のこと
海外の生地ショップをのぞいていると、「Cuddle」という名前の生地に出会うことがあります。やけにふわふわした見た目、100色を超えるカラーバリエーション、そして「これ、どこまで柔らかいの?」と思わず手が伸びてしまうような質感。いったいどんな生地なのか、今回はCuddleの魅力をじっくりご紹介します。
Cuddleってどんな生地?
「Cuddle(カドル)」とは、英語で「抱きしめる」という意味の言葉。その名のとおり、思わず抱きしめたくなるほどの柔らかさを持つプラッシュ(毛足のある)生地です。
素材は100%ポリエステルのマイクロファイバー。細かな繊維を密に織り上げることで、表面に短くて均一な毛足(パイル)が生まれ、あのなめらかでふっくりとした手触りが実現しています。よく「ミンキー(Minky)生地」と同義で語られますが、これはCuddleがミンキーの一種であり、ブランド名でもあるためです。
フリースとどう違うの?
同じポリエステル素材のふわふわ生地として「フリース」がありますが、両者は別物です。フリースは表裏どちらも起毛していて、やや粗めの質感。対してCuddleは基本的に片面のみに密な毛足があり、より高級感のある、なめらかなタッチが特徴です。カシミヤやミンクの毛皮に似た感触と表現されることも多く、触るほどに「やめられない」感覚を生み出します。
“As soft to the touch as natural cashmere and mink, Cuddle is actually 100% polyester. The high quality and density of the nap is what distinguishes it from its standard fleece cousins.”
(天然カシミヤやミンクのように柔らかな手触りですが、Cuddleは実際には100%ポリエステルです。通常のフリースとの違いは、パイルの高品質さと密度にあります。)
— Sew4Home
Cuddleを生んだブランド、Shannon Fabrics
Cuddleという名称は、アメリカ・ロサンゼルスを拠点とする生地メーカー「Shannon Fabrics(シャノン・ファブリクス)」の登録商標です。もともとはペルシャ(現在のイラン)で布地の商いを学んだ移民が創業し、親子二代でアメリカに根を張ってきた家族経営の会社。2000年代にロサンゼルスで小売店を開いたのち、ホールセール(卸売)に軸足を移し、今では世界中の手芸店やキルトショップにCuddleを供給するまでに成長しました。
同社のモットーは “Making The World A Softer Place”(世界をもっと柔らかく)。その言葉のとおり、Cuddleシリーズは単色のソリッドカラーから始まり、今では柄プリント・エンボス加工・メタリックスパークル・両面タイプと、バリエーションが豊かに広がっています。
PROFILE
Shannon Fabrics
アメリカ・ロサンゼルス拠点のプラッシュ生地専門メーカー。Cuddle(ミンキー)、フォーファー(フェイクファー)、Embrace(ダブルガーゼ)などを展開。世界中の手芸店やキルトショップに卸売を行う。
公式サイト:shannonfabrics.com
→商用利用OKのかわいいUSAコットンあります・輸入生地のオンラインショップ
Cuddleのバリエーション
一口にCuddleといっても、実はいくつかのラインがあります。用途や好みに合わせて選ぶのが楽しいところです。
Cuddle(スタンダード)
パイルの高さが約3mmのベーシックライン。100色以上のソリッドカラーを筆頭に、キャラクタープリントやエンボスデザインも豊富。扱いやすさとコストのバランスが良く、初めてCuddleを使う方にもおすすめです。
Luxe Cuddle(ラックスカドル)
スタンダードよりもパイルが高く、よりふっくりとした贅沢な質感。仕上がったブランケットやぬいぐるみを手にしたとき、思わず顔をうずめたくなる柔らかさです。テクスチャーバリエーションも豊富で、ローズスワール(バラの渦模様)やシープスキン風など、見た目にも楽しいデザインが揃っています。
Cuddle Dimple(ディンプル)
表面にぽこぽことしたドット凹凸(ディンプル)のあるタイプ。他のCuddleラインと異なり、縦横両方向に伸縮性があるため、裁断や縫製の際に少し注意が必要です。
“What began as a line of high-quality minky fabric in solid colors, our Cuddle collection has expanded to include not just our wide range of solid colors, but embossed minky fabrics, fun and unique prints, minky fabric with metallic sparkles and even double-sided minky fabrics.”
(単色の高品質なミンキー生地として始まったCuddleシリーズは、今やエンボス加工・ユニークなプリント・メタリックスパークル・両面タイプまで、幅広いラインナップに成長しました。)
どんな作品に使われるの?
Cuddleが特に愛されているのが、赤ちゃんや子どものためのアイテム作り。洗っても洗っても柔らかさが変わらず、色も落ちにくいポリエステル素材は、何度もお洗濯が必要なベビーグッズにぴったりです。
代表的な用途としては次のようなものが挙げられます。
ベビーブランケット・おくるみ / キルトの裏地(バッキング) / ぬいぐるみ・スタッフドアニマル / ルームウェア・パジャマ / クッションカバー・枕 / ペット用ベッド・毛布 / スパタオルやガウン
キルトのバッキング(裏地)として使う場合、Cuddleを使うとキルト全体がふんわりと柔らかい仕上がりになり人気があります。パイルが短めのCuddleを選べば、キルティングのデザインもきれいに浮かび上がります。
Cuddleを扱うときに知っておきたいこと
柔らかくて魅力的なCuddleですが、初めて扱うと「思ったより難しい!」と感じることも。知っておくと安心なポイントをまとめました。
毛並みの方向(ナップ)を確認する
Cuddleには「ナップ(nap)」と呼ばれる毛並みの方向があります。手で生地をなでると、一方向はするっとなめらかで、逆方向はやや抵抗感があります。裁断するときは、すべてのパーツで毛並みの向きを揃えること。向きがバラバラになると、色の見え方が変わって仕上がりが不揃いになってしまいます。
伸びる方向に注意
Cuddleは横方向(耳に対して垂直方向)に伸び、縦方向にはほとんど伸びません。縫い合わせるときは伸びる方向を意識してピンを多めに打つか、ウォーキングフット(送り歯押さえ)を使うと生地がずれにくくなります。
裁断時の毛くずに注意
カットすると細かな毛くずが出ます。ロータリーカッターで裁断するのがおすすめで、裁断後は屋外で生地を振るかドライヤーの冷風で毛くずを落とすと後の作業が楽になります。ミシン内部にも毛くずが溜まりやすいため、作業後はこまめな掃除を忘れずに。
アイロンは直接当てない
ポリエステル素材のため、アイロンを直接当てると繊維が溶けてしまいます。どうしてもアイロンが必要な場合は、あて布をして低温で慎重に。基本的にはシワになりにくい生地なので、アイロン不要なことがほとんどです。
“Cuddle does not fray — it is a knit based construction — but be warned, it sheds! So, grab your lint roller and be sure to clean out the bobbin basket after sewing your project.”
(Cuddleはニット構造なのでほつれませんが、毛くずが出ます。粘着ローラーを手元に置いて、作業後はボビンケースを掃除するのをお忘れなく。)
抱きしめたくなる生地、Cuddle
ひとたび触れると忘れられない柔らかさ、豊富なカラーとデザイン、そして洗濯を重ねても変わらないクオリティ。Cuddleはそのすべてが揃った、海外ハンドメイドシーンを代表するプラッシュ生地です。
裁断時のコツや毛並みの扱いさえ押さえてしまえば、大判のブランケットからちいさなぬいぐるみまで、さまざまなものを作ることができます。「贈り物に何か温かいものを縫いたい」「赤ちゃんへのおくるみを手作りしたい」と思ったとき、ぜひCuddleを選択肢に加えてみてください。
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