シキボウが「サステナブルファッション・パートナー制度」に参画 使い終わった服の行き先を、糸づくりの会社がつなぐ
10月8日、1892年創立の繊維メーカーであるシキボウ株式会社が、環境省の「サステナブルファッション・パートナー制度」に参画したと発表しました。
服がつくられ、着られ、手放されるまでの流れのなかで、「手放したあと」をどうつなぐか。いま、ファッションの世界でいちばん大きな問いのひとつです。今回の発表で具体的に示されたのは、使用済みの衣類を糸や生地に戻す「彩生(さいせい)」と、コットンの廃材をプラスチックの原料に生まれ変わらせる「CottResin(コットレジン)」という2つの取り組みでした。
01 そもそも「サステナブルファッション・パートナー制度」とは
環境省、経済産業省、消費者庁の3省庁は、令和8年度に新しく「サステナブルファッション・キャンペーン」を立ち上げました。季節の変わり目の「衣替え」をきっかけに、一人ひとりが服との関わり方を見つめ直し、行動に移していこう、という呼びかけです。
「サステナブルファッションを新たな生活習慣として」
パートナー制度は、このキャンペーンにあわせて環境省が創設した仕組みです。企業・団体・学校・自治体などが参加し、リユース、リペア、リサイクルといったばらばらの取り組みを、官民学でつないで一体的に進めることを目的にしています。事務局は環境省が務め、経済産業省と消費者庁が協力する形です。
10月5日には第1回のパートナー総会が開かれ、キャンペーンのロゴマークとキャッチコピー「衣替えのこころがけ」が発表されました。公募にはキャッチコピーが721点、ロゴマークが93点寄せられたそうです。同日時点のパートナー会員は、企業89社、団体26件、自治体5件、大学1件の合計121団体。会員になると、キャンペーンのロゴマークを申請なしで無償で使えるようになります。
背景にあるのは、国が掲げる数字です。報道によると、家庭から廃棄される衣類の量を、2030年度までに2020年度比で25%削減する目標が示されています。個々の会社が別々に動くだけでは届きにくい距離を、制度の力でつなぎ合わせていこうという狙いが見えてきます。
02 シキボウは、どんな会社?
シキボウは、明治25年(1892年)に創立された総合素材メーカーです。繊維のほか、産業資材、機能材料、不動産・サービスの4つの事業を展開しています。繊維の分野では、使用済みの衣類や端材から糸をつくる「反毛・紡績」、糸から生地をつくる「織布・編立」、染色や機能付与を行う「加工」、そして「縫製」まで、ものづくりの拠点をそろえているのが特徴です。
PROFILE
シキボウ株式会社
創立:1892年(明治25年)8月5日
代表取締役社長執行役員:鈴木 睦人
事業:繊維/産業資材/機能材料/不動産・サービス
公式サイト:https://www.shikibo.co.jp/
今回の参画は、突然の出来事というより、この1〜2年の歩みの延長線上にあるように見えます。公式のニュースリリースや報道を振り返ると、こんな動きが並んでいます。
直近のサステナビリティの動き
2025年10月には、シキボウ本体とベトナムの販売子会社が、オーガニックテキスタイルの国際認証「GOTS」と、リサイクル素材の国際認証「GRS」を取得しました。同年11月には、大阪府と民間企業が衣類の地域共創型サーキュラーエコノミーをめざして設立した「サステナブルファッション・プラットフォーム協議会」に参画。2026年1月にはグループ会社でGRSを取得し、9月には富山工場で紡績糸の製造に使う電力を、非化石証書の活用により実質再生可能エネルギー100%にしたと発表しています。
素材づくり、認証、エネルギー、地域での連携。そして今回の制度への参加と、ひとつずつ積み重ねてきた先に今回の発表があるのだと思います。
03 「彩生」 着なくなった服が、もう一度糸になる
ひとつめの取り組み「彩生」は、使用済みの衣類や生地の端材を、反毛(はんもう)・紡績といった工程を経て、新しい糸や生地へつなげる「繊維to繊維」のアップサイクルシステムです。反毛とは、布をほぐして、もう一度ばらばらの繊維の状態に戻すこと。そこから糸をつくり、織ったり編んだりして生地にし、縫製して製品に仕立てます。
シキボウのサイトでは、手放された衣類のうちリサイクルやリユースに回るのは35%にとどまる、という環境省の調査(令和4年度)の数字を紹介しています。残りの大部分は、まだ使える可能性があるのに循環の外へ出てしまっているということになります。
音楽フェスのTシャツから、新しいTシャツへ
具体的な事例として紹介されているのが、音楽イベントとのコラボレーションです。フェスやライブのグッズでおなじみのプリントTシャツのうち、着ないまま眠っているものを会場で回収し、アップサイクルして新しいTシャツをつくります。ファンだけでなく、アーティストからも回収するのだそうです。流れは、回収・分別、カット、反毛、糸、生地、そして縫製を経て新しいTシャツへという順番です。なお、カットの作業は外部委託とされています。
事例として挙げられているのは、2024年に25周年を迎えた中四国最大級の野外ロックフェスティバル「MONSTER baSH」と、2023年に25回目を迎え大阪城ホールで開催されたスピッツのレギュラーイベント「ロックロックこんにちは!」です。思い出の詰まった一枚が、また誰かの一枚になる。服の循環をイベントの記憶といっしょに体験できるのは、とても素敵なアイデアだと感じます。
支えているのは、グループの「杢糸」の技術
「彩生」は、グループ会社の新内外綿株式会社(大阪市中央区)と、株式会社ナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)とともに進めています。ナイガイテキスタイルは、色や組成の異なる原料を混ぜて紡ぐ「杢糸(もくいと)」を得意とする会社で、その技術を生かして、彩生の反毛・紡績の工程を担っています。多品種・小ロット・短納期に対応できる生産体制と、素材や色、混率を細かくコントロールする調合設備が強みとされています。色や素材がさまざまな衣類を原料にするとき、こうした調合の技術が大きな意味を持つのだろうな、と想像が膨らみます。
04 「CottResin」 コットンの廃材が、プラスチックの仲間になる
もうひとつの取り組み「CottResin(コットレジン)」は、繊維からプラスチックへという、少し意外な行き先を用意したものです。公式サイトのキャッチコピーが、その発想をよく表しています。
「“捨てない”を本気で考えたら、プラスチックと繊維がつながった。」
生産工程で出るコットンの廃材や、回収された廃棄衣料などを細かく粉砕し、「セルロースマイクロファイバー」と呼ばれる微細な繊維にします。それをプラスチックの原料と混ぜ合わせて、樹脂のペレット(粒状の原料)にする仕組みです。コットンという植物由来の資源を使うため、バイオマス由来の樹脂として、日本有機資源協会の「バイオマスマーク」の認定も受けています。
どんな特長があるのか
シキボウによると、コットンの微細な繊維を混ぜることで、引張強度、曲げ強度、弾性率、耐熱性、摺動性(すべりやすさ)が高まり、成形したときの収縮も小さく抑えられるとのことです。コットン由来のナチュラルでマットな質感ややさしい手触りも特長で、従来のプラスチック成形機にそのまま対応するため、特別な設備を入れなくても導入できるとされています。射出成形、ブロー成形、3Dプリンターでの製造が可能です。
用途のイメージとしては、複合機、自動車内装、オフィス家具、ボトルやクリームジャー、電子部品トレー、建材などが挙げられています。服として役目を終えたコットンが、身近な暮らしの道具のなかに、また形を変えて入っていく。繊維の新しい行き先として、ユニークな提案です。
産官学の取り組みともつながっている
CottResinの製造拠点は、グループ会社の株式会社シキボウ江南です。同社は、産官学連携で進む愛知県の「あいちサーキュラーエコノミー推進プロジェクトチーム」に参画し、「繊維・衣類循環利用」の分野で再資源化とアップサイクルの実証に取り組んでいます。また、海洋プラスチック問題の解決に向けた環境省の「プラスチック・スマート」キャンペーンにも登録しています。今回のパートナー制度への参画は、こうした流れの、また新しい接点になりそうです。
まとめ 布を愛する私たちにとっての「衣替え」
シキボウは今回の参画で、環境に配慮したものづくりと、使用済み衣類の活用(リサイクル)に取り組む姿勢を示しました。具体的な柱は、衣類を糸に戻す「彩生」と、コットン廃材をプラスチックの原料にする「CottResin」の2つ。今後もパートナーとの連携を深め、サステナブルな商材や技術を通じて、繊維資源の循環に取り組んでいくとしています。
環境省の発表では、キャンペーンが育てたい価値観として、「質の良い衣服を大切に着る」ことと、「衣服は資源として次の世代・人・ものへ」という考え方が挙げられています。ソーイングやハンドメイドを楽しむ私たちにとって、これはどこか身近な話ではないでしょうか。端切れでポーチをつくる、着なくなった服をリメイクする、お気に入りの布をていねいに使い切る。そうした日々の小さな営みも、同じ流れのなかにあるのだと思います。
制度もキャンペーンも始まったばかりです。環境省のページでは、具体的な取り組みの内容を随時更新していくとされています。衣替えの季節に、クローゼットの中の一枚の「これから」を、ちょっとだけ考えてみる。そんなきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
SOURCES
シキボウ ニュースリリース(2026年10月8日)
シキボウ 彩生~saisei~
シキボウ CottResin(コットレジン)
シキボウ ニュースリリース一覧
シキボウ 2026年3月期第2四半期決算説明会資料(EDINET DB掲載)
FASHIONSNAP.COM シキボウのGOTS・GRS取得(繊研plus記事)
環境省 サステナブルファッション・キャンペーン
環境省 報道発表(2026年9月29日)
WWDJAPAN 環境省がサステナブルファッション・キャンペーン始動
オルタナ 環境省、ルミネなど121団体をサステナブルファッション・パートナーに
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