9月12日は「International Crochet Day」。一本のかぎ針が、世界中の手をつなぐ日
9月12日は「International Crochet Day(国際かぎ針編みの日)」。世界中のクロッシェ愛好家が、技術や作品を披露し合い、初心者に編み方を教え合う日です。今日は、この小さな記念日の成り立ちと、世界の楽しみ方、そしてファブリックとの意外な近さについて綴ってみます。
かぎ針編みという、静かな芸術のはじまり
かぎ針編みの起源は諸説あり、中国説やアラビア説などが語られていますが、現在私たちが知る形のクロッシェは19世紀のヨーロッパで広まったとされています。編み針を使うニット(棒針編み)と違い、かぎ針編みは一本のフックだけで、一目ずつ完成させながら進めていくのが特徴です。当時は貧しい女性たちの内職としても、裕福な家庭の女性のたしなみとしても、階級を問わず親しまれた手仕事でした。
ひとりのブロガーが始めた記念日
International Crochet Dayが生まれたのは2007年。「Jimbo’s Front Porch」というブログを書いていたJimboさんが、自宅の牧場の建築資金を集めるために木彫りのかぎ針を手作りしたことがきっかけでした。彼はこの手仕事にもっと光が当たってほしいと願い、9月12日を「かぎ針編みの日」と名付けたのです。
“the art of crochet and those who practice the art deserve some significant recognition”
(かぎ針編みという芸術と、それを実践する人々は、しっかりと評価されるべきだと思う)
大きな公式行事があるわけではないけれど、ブロガーや愛好家たちの口コミによって少しずつ広がり、今では手芸コミュニティのなかでよく知られた記念日になりました。ちなみにアメリカでは9月12日は「National Day of Encouragement(励ましの日)」でもあり、誰かをそっと応援したくなる季節と重なっているのも、なんだか素敵な偶然です。
世界をつなぐ糸 —「教え合う」文化のかたち
International Crochet Dayらしい楽しみ方のひとつが「CAL(Crochet Along/クロッシェ・アロング)」です。世界中の参加者が同じ作品を、同じ期間をかけて一緒に編み進めるオンラインイベントで、パターンが少しずつ公開されるのが特徴。Facebookグループやハッシュタグを通じて進捗を報告し合い、初心者は経験者から新しい編み方や糸のつなぎ方を教わりながら、一目一目、自信を積み重ねていきます。
「がんばりすぎない」という選択
興味深いのは、多くのCALホストが「完璧に編み終えること」より「気軽に参加し続けられること」を大切にしている点です。毛糸ブランドSecret Yarneryを主宰するクリエイター、クリスタ・パテルさんも、2026年のCAL運営について次のように語っています。
“keep the structure but lose the pressure”
(構成はそのままに、プレッシャーだけを手放す)
スケジュール通りに進まなくても大丈夫、途中から参加しても大丈夫。そんな緩やかなルールが、初心者を安心させ、教え合う空気を自然に生み出しているのだと思います。International Crochet Dayには、新しいステッチに挑戦する人もいれば、誰かに編み方を教える人もいる。SNSでは作品の写真を共有し合い、国境を越えて「素敵ですね」の一言が交わされます。
布と糸のあいだで —ファブリックショップから見るクロッシェ
かぎ針編みと生地は、道具も工程もまったく違う手仕事です。けれど、糸を一目ずつ繋いで面をつくっていく感覚は、布を裁ち、縫い合わせて形にしていく感覚とどこか似ています。海外では、アイルランドのレース編みやメキシコのシュガースカルモチーフなど、その土地ならではの文化がクロッシェに息づいていますし、日本の「あみぐるみ」も、海外の愛好家たちから独自の文化として親しまれている編み物のひとつです。
裁縫をする人にとっても、クロッシェのモチーフはバッグの持ち手を飾ったり、端切れと組み合わせてポーチにしたりと、布仕事の世界を広げてくれる存在です。糸と布、それぞれ違う道具を手にしながらも、「何かをかたちにしたい」という気持ちは、きっと同じところから生まれているのだと思います。
むすびに
9月12日、International Crochet Dayに何か特別なことをする必要はありません。引き出しの奥にしまってあったかぎ針を取り出してみる、SNSで誰かの作品にそっと「いいね」を送る、それだけでも十分にこの日を祝ったことになるはずです。糸であれ布であれ、手を動かして何かを生み出す時間が、今日も世界のどこかで静かに誰かを支えていますように。
jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

