公共の場所で編み物をする日 World Wide Knit in Public Day

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「布や糸に向き合う時間を、誰かと分かち合いたい」という気持ちはきっと世界共通

編み針を外へ。World Wide Knit in Public Dayという発明

編み物といえば、家の中で一人静かに向き合うものというイメージがあるかもしれません。けれど6月の第2土曜日、世界中の編み物好きたちが一斉に外へ出る日があります。「World Wide Knit in Public Day(WWKiPD)」。2005年にたった25件のイベントから始まったこの運動は、いまや57か国、1000件を超える集まりへと育ちました。今回は、その誕生の物語と、手芸を外へ連れ出すことの意味について書いてみたいと思います。


一人の編み物好きが始めた、小さな思いつき

WWKiPDを考えたのは、アメリカの編み物愛好家、ダニエル・ランデスさんという一人の女性でした。2005年当時、編み物はもっぱら家の中でひっそり楽しむ趣味とされていて、同じ街に暮らす編み物仲間の存在に気づかないまま過ごしている人も少なくありませんでした。それなら、みんなで外に出て、編み針を手にした姿をお互いに見せ合ってみたら —。そんなシンプルな思いつきから、この日は生まれています。

記念すべき第1回、2005年の開催規模はごく小さく、世界中でおよそ25件のイベントが開かれただけでした。それでも「編み物は、おばあちゃんだけのものじゃない」というメッセージは静かに共感を広げ、翌2006年には約70件、2007年には約200件と、驚くほどの速さで各地に広がっていきます。

“Better Living Through Stitching Together”
(編み物をともにすることで、より良い暮らしを)


Days Of The Year

これがWWKiPDに掲げられた合言葉です。編み物という一見孤独な手仕事を、あえて人と人をつなぐための時間に変えてしまう。この発想の転換こそが、20年経ったいまも世界中の人の心をつかみ続けている理由なのだと思います。

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一年ごとに広がっていった、編み物の輪

WWKiPDには、企業や公式団体による中央組織がありません。運営しているのは、各地に散らばるボランティアの編み物好きたちです。「どこで開くか」「何をするか」を決めるのもすべて現地の主催者次第。この分散型のゆるやかな仕組みが、かえって世界中への広がりを後押ししたと言われています。

開催日のかたちも、少しずつ変わってきた

実はこのイベント、2014年までは「6月第2土曜日から第3日曜日まで」という、まるまる1週間以上続くお祭りでした。2015年からは現在のように「6月第2土曜日」の1日に集約され、より参加しやすい形に落ち着いています。2026年は、記念すべき20周年でした。6月13日の土曜日に世界各地で、公園やカフェ、図書館の片隅に編み物の輪ができたことでしょう。

ただ集まるだけじゃない、それぞれのテーマ

多くの地域のKIP(Knit in Public)イベントには、独自のテーマが設けられています。病院へ贈るための編み物、早産で生まれた赤ちゃんのための小さな帽子づくり、環境をテーマにしたコミュニティアートなど。ただ集まって編むだけでなく、そこに小さな社会貢献の意味を重ねている点も、この日らしい特徴です。

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「外で手を動かす」文化は、ニットだけのものじゃない

WWKiPDの名前には「Knit」という言葉が入っていますが、実際の現場ではかぎ針編みや刺繍、機織りなど、編み物以外のファイバーアートを持ち寄る人の姿もよく見られるそうです。「一人でこつこつ向き合う手仕事を、あえて人前に持ち出す」という発想そのものが、ジャンルを問わず手芸を愛する人たちの共感を呼んでいるのだと思います。

日本でも、この時期になると毛糸店や手芸店が「世界編み物の日」を記念したフェアを開くようになってきました。編み物と裁縫は道具も工程も違いますが、「布や糸に向き合う時間を、誰かと分かち合いたい」という気持ちは、きっと共通しているはずです。

普段は家の中で一人向き合っているソーイングも、たまにはカフェや公園に持ち出してみる。近所の手芸店の集まりをのぞいてみる。そんな小さな一歩が、手芸をめぐる世界とのつながりを、ふと感じさせてくれるかもしれません。

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おわりに

たった25件のイベントから始まったWorld Wide Knit in Public Dayは、20年かけて世界中に広がり、いまも中央組織を持たないまま、各地の人たちの手によって支えられ続けています。特別な予定を立てなくても、いつもの手仕事を少し外に持ち出してみるだけで、この日の輪の一部になれるはず。今年の6月第2土曜日、あなたも針や糸を持って、少しだけ外の空気を感じてみませんか。

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