ハンドメイド作家が一度は通る、模倣と類似の悩み

Shop Manager
Shop Manager
SNS上でも作品の模倣・類似問題はよく目にします。難しい問題ですが、違う見方・マインドも大切ではないでしょうか。

「似ている」とどう向き合うか。ハンドメイド作家が一度は通る、模倣と類似の悩み

ハンドメイドで作品を発表し、販売するようになると、誰もが一度はぶつかる悩みがあります。「あの作品、なんだか自分のに似ている」「真似されたのかもしれない」という気持ち。あるいは反対に、「真似していないのに、似ていると言われてしまった」という戸惑い。海外のハンドメイド作家のコミュニティをのぞいてみると、同じ悩みが国境を越えて繰り返し語られていることがわかります。今回は、Etsyの作家フォーラムや3Dプリント・クラフトコミュニティでの実際の声を手がかりに、模倣と類似の境界線について考えてみたいと思います。


実際に起きている「模倣トラブル」の声

Etsyの作家コミュニティフォーラムには、「自分の作品が真似された」という相談スレッドが数えきれないほど立っています。あるハンドペイントのクロスピン(洗濯ばさみ)作家は、ある朝、自分とまったく同じデザインを販売しているショップを見つけて驚いたと書いています。

「自分でデザインして作っているハンドペイントのクロスピンと、まったく同じデザインの商品を販売しているショップを今朝見つけて、本当に驚きました。同じような商品を作る人がいることに不満はないのですが、これはあまりにも自分のものと一致していて」


— Etsy Community Forum

この投稿に対して、ほかの作家たちからも「自分も似たような経験がある」という声が次々と寄せられていました。さらに深刻なケースもあります。イギリスのジュエリー作家エマ・ファーリーさんは、ハリネズミをモチーフにした手作りジュエリーのデザインが、海外の大手通販サイトで安価な模倣品として出回っていたことに大きな衝撃を受けたと、BBCの取材で語っています。

出品者たちはエマ・ファーリーさんの手作りデザインの写真をそのまま使いながら、実際には安価な模倣品を発送していた。


BBC News

3Dプリントの作品共有コミュニティでも、似たような投稿は珍しくありません。あるデザイナーは「自分のデザインがコピーされ、プロフィール写真や会社名まで使われていた」と報告し、コミュニティ全体が驚きと同情の声を寄せていました。こうした「明らかなコピー」は、作家にとって本当につらい経験です。ただ、興味深いのは、同じフォーラムの中で「ここまで似ているともう模倣と言えるけれど、すべての類似ケースがそうとは限らない」という、もう一段冷静な視点もたびたび語られていることです。

—  —

「自分が思いつくこと」は、他の誰かも思いついている

英語には「Great minds think alike(優れた頭脳は似たことを考える)」という慣用句があります。これはもともと、二人の人間が互いに連絡を取り合っていないのに、同じアイデアにたどり着くという現象を指す言葉です。学術的には「multiple discovery(複数独立発見)」と呼ばれ、進化論を独自に発見したダーウィンとウォレスの例がよく引用されます。

複数独立発見(simultaneous invention)とは、ほとんどの科学的発見や発明が、複数の科学者・発明家によって互いに独立に、ほぼ同時期になされるという仮説である。優れた頭脳は似たことを考える。


PubMed

この考え方は、ハンドメイドの世界にもそのまま当てはまります。クロッシェ作家として活動するパム・グライスさんは、自身のブログで「ファイバーアートの世界には、使える編み目の種類も、それを組み合わせる方法も、結局はそれほど多くない」と語り、似たアイデアに行き着くのは避けられないことだと述べています。

インターネット時代、私たちは無意識のうちにたくさんのものに触れていて、多くの人が同じトレンドを追いかけ、それを自分のものにしようとしている。だから、時には──同じ時期に──誰かと同じアイデアに行き着いてしまうのは、ある意味当然のこと。本当に、よくあること。私自身も一度ならず、あるデザインに取り組んでいたら、コミュニティの誰かが数日前か数日後にまったく同じものを発表していた、ということがあった。


Crochetpreneur

同じ素材、同じ技法、同じ季節のトレンドに向き合っていれば、誰かと作品が似てしまうのは、むしろ自然な現象なのかもしれません。それは「個性がない」ということではなく、人がものを作るときの発想がいかに似た道筋をたどりやすいかを示しているように思います。

—  —

模倣と類似の線引きは、想像以上に難しい

デザインの著作権をめぐる海外の議論でも、「どこからが模倣で、どこまでがトレンドの共有なのか」という線引きの難しさが繰り返し指摘されています。フィンランドのファッション法研究者ヘイディ・ハルコネンさんは、模倣をめぐる炎上の多くについて、こう語っています。

こうした模倣をめぐる炎上は、知的財産権がどういうものか、デザインにどう適用されるのかが正しく理解されていないために起きる、いわば「コップの中の嵐」であることが多い。複数のデザイナーが同じトレンドを追い、互いのデザインからインスピレーションを受けていれば、似たような製品が市場に出てくる可能性は当然高くなる。


Kotona

そして、もうひとつ知っておきたいのが、「真似していないのに模倣だと言われる」側の苦しさです。Etsyのフォーラムには、自分が好きで取り組んでいたパターンが、たまたま他の作家の作品と似ていたために疑いをかけられた、という投稿もあります。あるフォーラム参加者は、こう書いていました。

自分が他の人と同じものを作ってしまうことに、罪悪感を感じたことのある人はいますか? ある作品を見たあとに自分なりのものを作ろうと決めたとき、それについてどう感じましたか? それとも、誰かのパターンを盗んで自分のものだと偽ったり、それで利益を得たりしていない限り、本当はそんなに気にすることではないのでしょうか。


— Etsy Community Forum

この問いかけに対して、他の作家たちは「レシピのようなものだと思えばいい。同じ料理にも、作り手ごとに少しずつ違うレシピがたくさんある」と答えていました。布や糸、編み目という限られた素材と技法を使う以上、まったく重なりのない作品ばかりを生み出すことは、誰にとっても難しいことなのだと思います。

パム・グライスさんも、自分が「模倣されたのでは」と疑ってしまった経験について、正直にこう振り返っています。

一度か二度、誰かに「真似されたのでは」と疑いを抱いたことがあったが、後になって、そのデザインは私のものより何週間も前に発表されていて、私自身がそれを見たことすらなかったとわかった。


Crochetpreneur

「似ている」と感じた瞬間の自分の記憶や感情だけでは、本当に模倣だったのかを判断しきれないことがある。これは、模倣を疑う側にも、疑われる側にも言える、少し心に留めておきたい事実だと思います。

—  —

それでも、おおらかにハンドメイドを楽しむために

もちろん、写真をそのまま盗用されたり、文章や型紙を一字一句コピーされたりするような、明らかな模倣行為は別の話です。そうした被害には、落ち着いて記録を残し、必要であれば運営への報告や専門家への相談という形で対応することが大切です。ただ、それとは別に、「似ているかもしれない」という疑いの段階で心がすり減ってしまうことについては、少し距離を置いて考えてみる価値があるように思います。

パム・グライスさんは、疑念にとらわれそうになったとき、自分にこんな問いを向けることを勧めています。

「彼女は何様だと思っているのか」ではなく、「自分はどんな人間でありたいのか」と問いかけてみること。たとえ本当に真似されたのだとしても、そのことに腹を立てたり、フォロワーを巻き込んで騒ぎ立てたりして、何が生まれるだろうか。


Crochetpreneur

Etsyの古いフォーラムにも、長年ハンドメイドを続けてきた作家からの、こんな温かい言葉が残っていました。

模倣する人たちのことを心配しなくていい。彼らは長くは続かない。誰かのアイデアを借りているだけだから、そこには本当の情熱がないのだから。


Creative Hive Co.

作品が誰かと似てしまうことも、誰かに似ていると言われてしまうことも、ハンドメイドを長く続けていれば、きっと一度や二度では済まないはずです。そのたびに「自分は本当に独自性があるのか」と思い悩むのではなく、「限られた布や糸や技法の中で、人はやっぱり似たところに行き着くものなんだな」と捉え直してみる。そうすることで、創作そのものを楽しむ余白が、また少し戻ってくるように思います。

自分の作品づくりに集中し、自分のお客様や仲間との関係を大切にすること。海外のコミュニティで繰り返し語られていたのは、結局この、とても地味だけれど確かなアドバイスでした。誰かと比べることに使う時間とエネルギーを、次の一作に向けてみるのも、ひとつの選択肢かもしれません。

—  —

おわりに

「似ている」という感覚は、ハンドメイドという、限られた素材と技法の中で個性を表現する営みにつきものの感情なのかもしれません。明らかな模倣には冷静に向き合う一方で、似てしまうこと自体は、誰しもに起こりうる自然なことだと知っておくこと。そして、他人の作品にとらわれすぎず、自分の手の中にある布や糸と向き合う時間を大切にすること。それが、長くハンドメイドを楽しみ続けるための、ひとつのヒントになるのではないでしょうか。

jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。

ショップへ

✦ 新着商品
読み込み中...
ショップで全商品を見る →