編み図は世界共通? 日本の記号図と海外の文章パターンを読み比べる
海外のデザイナーが公開している素敵なニットやクロッシェのパターンを見つけて、開いてみたら「1段目:k2、p1……」と、見慣れない文字がずらり。あるいは、見覚えのある記号図なのに、凡例に書かれた名前が日本で習ったものと違う。そんな経験はありませんか。
結論から言うと、編み図は完全に世界共通ではありません。けれど、書き方の違いと「ここだけ気をつけたいポイント」さえ知っておけば、国境を越えて読み解くことができます。今回は、日本の記号図と海外の文章パターンの成り立ちを、公的な規格や海外の編み物メディアの情報をもとにたどってみます。
日本の編み図は「描いて伝える」記号図
日本の手編みの本や雑誌では、編み目を記号に置き換えて、方眼や円形のグリッドに並べた「記号図」が使われるのが一般的です。たとえば鎖編みは楕円、細編みは「×」や「+」といった具合に、編み目の形を連想しやすい記号が選ばれています。
この記号には、日本産業規格(JIS)の裏づけがあります。JIS L 0201「編目記号」は、家庭用編機と手編みの編目記号を定めた規格で、棒針編み、かぎ針編み、アフガン編みなどの記号を分類して載せています。あるブログの整理によると、制定は1955年、1995年に改正、2010年に確認され、原案は日本編物検定協会が作成したとのことです。長い時間をかけて整えられてきた「共通言語」なのですね。
記号は「表から見た編み目の姿」を表す
棒針編みの表目は縦棒で表されます。そして裏目は横線。実はこの縦棒と横線の組み合わせ、海外でも使われています。アメリカの老舗編み物誌ヴォーグ・ニッティングも、編み図の読み方のページで「表目は縦線、裏目は横線」と説明しているのです。
Symbolcraft is a universal form of knitting instructions.
シンボルクラフト(記号による編み図)は、編み物の指示を伝える世界共通の形式です。
同じページには、各記号は「編み地の表側から見たときの編み目」を表すと書かれています。往復編みで裏側を編む段では、図と反対の編み方をする、というルールです。表目の記号は、裏側の段では裏目として編む。日本の記号図を読んだことのある方なら、おなじみの考え方だと思います。
欧米の棒針編みは「書いて伝える」文章パターンが主流
英語圏の棒針編みでは、数字・単語・略語で一段ずつ指示する「文章パターン(text pattern)」がよく使われます。たとえば「Row 1: k2, p1, k2」のように、1段目は表目2目、裏目1目、表目2目、と読みます。ウィキペディアの整理では、編み物のパターンには文章形式とチャート形式の2種類があり、両方を載せているものや、始めと終わりは文章で模様の繰り返し部分だけチャートにするものもあるそうです。つまり「日本は記号図、欧米は文章」という分け方は、あくまで傾向だと考えるのがよさそうです。
まず覚えたい略語
| 略語 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| k | knit | 表目(k2なら表目2目) |
| p | purl | 裏目 |
| st | stitch | 目 |
| yo | yarn over | かけ目 |
| k2tog | knit 2 together | 右上2目一度(右上がりの減目) |
| ssk | slip, slip, knit | 左上2目一度にほぼ相当(左上がりの減目) |
| RS / WS | right side / wrong side | 表側 / 裏側 |
略語の意味は、ウィキペディアの編み物パターンの項目に挙げられている一般的なものです。左右どちらに傾く減らし目なのかが、略語ひとつで分かるのが面白いところです。
チャートも、実は「統一規格が一つ」ではない
欧米でも近年はチャートが使われます。ただし日本のJISのように「これが唯一の基準」という規格は、英語圏にはありません。アメリカでは業界団体のクラフト・ヤーン・カウンシルが標準記号を公開していますが、ウィキペディアによれば、編み物の記号や略語について決定的な単一の出典はなく、複数の基準が並存しているとのことです。裏目を表す記号も、横線のかわりに小さな点が使われることがあります。
There is no single authoritative source for knitting symbology and knitting abbreviations
編み物の記号や略語について、唯一絶対の出典というものはありません。
だからこそ、海外のチャートを使うときは、そのパターン自身の「記号一覧(凡例)」を確認することが何より大切になります。
かぎ針編みの最大の落とし穴は、US式とUK式
かぎ針編みでは、記号図そのものは国際的に共通の意味を持つとされています。ところが、文章で書かれた編み目の名前は、アメリカとイギリスで一段ずつずれています。日本の「長編み」は、アメリカ式ではdouble crochet(dc)、イギリス式ではtreble crochet(tr)と呼ばれます。
Schematic crochet symbols have a consistent meaning internationally.
かぎ針編みの記号図は、国際的に一貫した意味を持っています。
日本語・US式・UK式の対応表
| 日本語 | US式 | UK式 |
|---|---|---|
| 細編み | sc(single crochet) | dc(double crochet) |
| 中長編み | hdc(half double crochet) | htr(half treble crochet) |
| 長編み | dc(double crochet) | tr(treble crochet) |
| 長々編み | tr(treble crochet) | dtr(double treble crochet) |
この対応は、クラフト・ヤーン・カウンシルのかぎ針編みの略語一覧にも示されています。日本語でUS式の対応を整理した解説記事でも、UK式では細編みがdcになることが注意点として挙げられています。同じ「dc」の二文字でも、USなら長編み、UKなら細編み。取り違えるとまったく違う編み地になってしまいます。
US式かUK式か見分けるヒント
パターンの冒頭に「US terms」「UK terms」と書かれていれば、それが答えです。書かれていない場合は、使われている略語が手がかりになります。上の対応表のとおり、中長編みはUS式なら「hdc」、UK式なら「htr」です。つまり「hdc」が出てくればUS式、「htr」が出てくればUK式とほぼ判断できます。
まとめ 海外パターンを読むための4つの確認
言葉や書き方が違っても、表目・裏目・増し目・減らし目といった編み目そのものは世界共通です。最初の一歩として、次の4点を確認してみてください。
1. かぎ針編みならUS式かUK式かを確認する
いちばん大きな落とし穴です。パターンの冒頭の注記か、hdc/htrといった略語から判断します。
2. 略語表(Abbreviations)に目を通す
k2togやsc2togのような略語は、パターンの冒頭や末尾に一覧が載っていることがほとんどです。デザイナーごとの独自略語もあるので、先に確認しておくと安心です。
3. チャートは必ず凡例(Chart Key)と照らし合わせる
クラフト・ヤーン・カウンシルの標準記号の資料でも、追加の記号の定義はパターンの凡例を参照するようにと念押しされています。
Always refer to the pattern key for additional symbol definitions.
追加の記号の定義については、必ずパターンの凡例を参照してください。
4. 表側・裏側(RS/WS)の読み替えを意識する
往復編みでは、チャートは基本的に表側から見た姿で描かれます。裏側の段では、図と反対の編み方をする。日本の記号図と同じ考え方なので、ここは安心して読み進められるはずです。
日本の記号図は「描いて」、海外の文章パターンは「書いて」伝える。入り口は違っても、どちらも手の中の一目一目を誰かに手渡すための工夫です。違いを知ったうえで、気になる海外パターンをひとつ開いてみてはいかがでしょうか。
参考にした情報
JIS L 0201:1995 編目記号
Vogue Knitting「Reading Charts」
Wikipedia「Knitting pattern」
Wikipedia「List of crochet stitches」
Craft Yarn Council「Crochet Abbreviations Master List」
Craft Yarn Council「Knit Chart Symbols」
jumble shop oneでは、厳選した海外ファブリックを取り揃えています。


