その生地の名前、実は商標です。

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一般名称のように使われるようになったこと自体が、それぞれの企業がつくり上げてきた品質と信頼の証でもあります

実は商標だった。普段づかいしている生地の名前、その正体

「リバティの生地」「ライクラ入りのレギンス」「マジックテープで留める」——手芸やお洋服の会話のなかで、当たり前のように使っている生地や素材の名前。じつはそのいくつかは、特定の会社だけが使うことを許された「登録商標」だということをご存じでしょうか。あまりに広く使われているせいで、まるで生地の種類そのものを指す言葉のように思われていますが、本来は一つのブランド名なのです。今日は、そんな「知らずに使っていた商標」を4つ、その背景と一緒にご紹介します。


01|リバティプリント——柄の名前ではなく、百貨店の名前だった

手芸好きの間で「リバティ柄」といえば、あの繊細な小花模様を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ですがこの「リバティ」、もともとは柄の種類を指す言葉ではなく、1875年にロンドンで創業した百貨店「リバティ」の名前そのものです。同店が展開する花柄プリント生地「リバティプリント」は、正式には英国リバティ社の登録商標にあたります。

実際にリバティプリントのほとんどは「タナローン」と呼ばれる、細番手のコットンを使った生地で作られています。生地そのものの名前は「タナローン」、そこにプリントされた柄のブランドが「リバティ」というわけです。手芸マーケットでハンドメイド作品を販売するときには「リバティ〇〇」のような表記は避け、「リバティプリント使用」「リバティ・ファブリックス使用」と表現するようにと、リバティ社自身がガイドラインを設けているほど、ブランドとしての線引きがはっきりしています。

リバティ社は、ハンドメイド作品を販売する際に「リバティポーチ」のような形容詞的な表記を避け、「リバティ社オリジナル商品」と誤解されない書き方をするよう案内しています。

 

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02|テンセル——素材の総称ではなく、一社の商標名

肌触りの良さとサステナブルな印象から、生地屋さんの店頭でもよく見かける「テンセル」。ユーカリの木材パルプから作られる再生繊維で、環境にやさしい素材として人気ですが、この「テンセル」という名前自体は、オーストリアのレンチング社が持つ登録商標です。

この繊維の一般名称は「リヨセル」といいます。もともとは英国コートルズ社が「テンセル」、レンチング社が「リヨセル」という別々の商標名で展開していたものが、2004年の両社合併によって「テンセル」がブランド名として一本化され、「リヨセル」は繊維そのものを指す総称として使われるようになりました。衣類のタグに「指定外繊維(テンセル)」と書かれているのは、まさにこの商標名を表示している状態というわけです。

バンドエイドと絆創膏のような関係

「テンセル」と「リヨセル」の関係は、日本でよく例えられる「バンドエイドと絆創膏」の関係にとても近いものです。同じ繊維を指していても、片方は商標名、もう片方は一般名称。生地を選ぶときにこの違いを知っておくと、タグの表記の見え方が少し変わってくるかもしれません。

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03|ライクラ——「伸びる生地」を代表する名前の正体

スポーツウェアやインナー、デニムのストレッチ素材として名前を聞く「ライクラ」も、じつはアメリカのデュポン社(現在はThe LYCRA Company)による登録商標です。1958年に開発されたこのポリウレタン系の弾性繊維は、ゴムのような伸縮性を持ちながら、他の繊維とわずかに混ぜるだけでもその特性を発揮するのが特徴です。

この繊維の一般名称は「スパンデックス」。日本では品質表示のうえで「ポリウレタン」と表記されることも多く、ヨーロッパでは「エラスタン」と呼ばれています。つまり「ライクラ」「スパンデックス」「エラスタン」「ポリウレタン」は、呼び方が違うだけで、指しているもの自体は近い関係にあるのです。生地の混率表示に「ポリウレタン◯%」とあるとき、それはライクラと呼ばれるあの伸縮素材と同じ仲間だと考えると、少し親近感がわきませんか。

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04|マジックテープ——「面ファスナー」の代名詞になった商品名

手芸やソーイングでもおなじみの、あの「バリバリ」と剥がれる留め具。多くの方が「マジックテープ」と呼んでいますが、正式な一般名称は「面ファスナー」です。「マジックテープ」は、1960年にクラレが生産・販売を開始した際につけた商品名で、現在も同社の登録商標にあたります。

1964年に登場した東海道新幹線の座席ヘッドレストカバーの留め具にこの製品が採用されたことをきっかけに、その名前が全国的に広まったといわれています。ちなみに、世界的には同じ仕組みの製品を最初に発明したスイスの会社に由来する「ベルクロ」という呼び名も知られていますが、こちらも英国Velcro IP Holdings LLCの登録商標です。「マジックテープ」も「ベルクロ」も、どちらも一つの会社の商品名でありながら、いつのまにか製品そのものの呼び名になっている、という点が共通しています。

クラレは自社サイトで「〈マジックテープ〉と呼べるのはクラレだけ」と明記し、面ファスナー全般を指す言葉として使われることに注意を促しています。


— マジックテープ®|クラレファスニング株式会社

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知っていると、生地選びが少しだけ豊かになる

リバティプリント、テンセル、ライクラ、マジックテープ。どれも普段は意識せずに使っている言葉ですが、その裏には「一つの会社が長い時間をかけて育て、守ってきたブランド名」という物語があります。逆にいえば、これほど広く一般名称のように使われるようになったこと自体が、それぞれの企業がつくり上げてきた品質と信頼の証でもあるのでしょう。次に生地屋さんの店頭やタグを目にするとき、その名前の奥にある背景を少し思い出していただけたら嬉しいです。

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