ニューヨーク発、生地の”ごみ”を宝物に変える団体「FABSCRAP」
裁断のたびに出る半端な布、使い切れなかった反物、サンプル用のスワッチ……。ファッションの街ニューヨークでは、毎週何千ポンドもの生地が「ごみ」として捨てられています。そんな現実に一石を投じているのが、ブルックリンを拠点とする非営利団体「FABSCRAP(ファブスクラップ)」です。今日は、生地を愛するすべての人に知ってほしい、この団体の取り組みをご紹介します。
FABSCRAPとは、どんな団体?
FABSCRAPは2016年、ニューヨークのアパレル業界で生まれ続ける「商業テキスタイル廃棄物」を減らすために設立された団体です。デザイナーやブランドが仕事の過程でどうしても出してしまう生地の切れ端や余った反物を回収し、リサイクルや再利用へとつなげています。
面白いのは、いわゆる寄付や助成金だけに頼るのではなく、ブランド側から回収サービスとして料金を受け取り、それを活動資金に充てているところ。ブランドにとっては「ごみを合法的かつ気持ちよく手放せる仕組み」となり、FABSCRAPにとっては「継続できる仕組み」になっているのです。
はじまりは、ひとりの女性の問題意識から
FABSCRAPを立ち上げたのは、Jessica Schreiberさん。「デザイン事務所からは、小さな慈善団体では手に負えないほどの量の生地くずが出るのに、産業用リサイクル業者に持ち込むには量が足りない」という、業界の隙間にある課題に気づいたことがきっかけだったといいます。今では800以上のファッション・インテリアブランドと提携し、毎週平均5,000ポンド以上の生地を受け入れる規模にまで成長しました。
回収した生地は、どうなるの?
ブランドから届いた生地は、まずブルックリンの倉庫でボランティアの手によって丁寧に仕分けされます。再利用できる生地は「リユースルーム」やオンラインショップへ、再利用が難しい小さな端切れは「ショディ」と呼ばれる混紡素材にダウンサイクルされ、断熱材やカーペットの下地、家具の詰め物などに生まれ変わります。
この仕分けの精度はかなり高く、回収した生地のおよそ92%を埋め立てから救い出しているのだそう。捨てられるはずだった生地が、もう一度誰かの手のなかで意味を持つ——その様子を、ある取材記事はこんな言葉で表現しています。
“treated as objects of value, worthy of a second life”
(価値あるもの、第二の人生にふさわしいものとして扱われている)
— No Kill Mag「Don’t Be Trashy: FABSCRAP NYC’s Waste Warriors」
ポリエステルの端切れも、有名ブランドのほぼ新品の生地も、FABSCRAPの倉庫では等しく「価値あるもの」として扱われる——この姿勢こそが、多くの人の心をつかんでいる理由なのかもしれません。
作り手にとっても、うれしい場所
FABSCRAPは、単なる「回収団体」にとどまりません。学生やアーティスト、クラフター、キルター、そして地域のデザイナーたちに向けて、集まった生地を安く販売する倉庫ショップとオンラインストアも運営しています。掘り出し物のなかには、有名ブランドの生地が紛れていることも珍しくないそうです。
ボランティアという参加のかたち
倉庫での仕分け作業には、一般のボランティアも参加できます。作業を終えると、参加者には5ポンド分の生地が無料で贈られ、さらに追加購入には30%オフの割引も。生地の山と向き合いながら、フェルトで作られたノームや、リメイクされたエルサのコスチューム、リサイクル糸で織られたテキスタイルなど、参加者たちの創造力が形になった作品を目にすることもあるといいます。「もったいない」から生まれる創作の連鎖が、この場所には息づいているようです。
ニューヨーク市では、事業系廃棄物の10%以上がテキスタイルである場合、その分別・リサイクルが義務づけられています。FABSCRAPのような団体は、法律の後押しと現場の実務をつなぐ、なくてはならない存在になりつつあります。
おわりに
一枚の生地が「ごみ」になるか「宝物」になるかは、それを扱う人の視点ひとつで変わる——FABSCRAPの活動は、そんなことをあらためて教えてくれます。ニューヨークという遠い街の話ではありますが、生地を選び、大切に使い切ろうとする気持ちは、私たちが日々ファブリックと向き合う姿勢ともきっとどこかでつながっています。
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