「和紙」と「木の実」から生まれた新素材──WA.CLOTH®とカポックの魅力を徹底解説
コットンや羽毛には、それぞれに小さな弱点があります。汗ばむ季節のべたつき、洗濯後の重み、そして動物由来の素材ゆえの葛藤。そんな「これまでの当たり前」を静かに更新しようとしているのが、和紙から生まれた糸「WA.CLOTH®(ワクロス)」と、木の実から採れる綿毛「カポック」です。どちらも自然の力を借りながら、着心地と環境負荷の両方に応えようとする、注目のサステナブル繊維。今日はこの2つを、それぞれの背景からご紹介します。
第一章|WA.CLOTH®(ワクロス)── 和紙の技術が纏う「紙糸」
原料はアバカ、和紙の技術を纏った糸
WA.CLOTH®の原料は「アバカ」というアサ科の植物。マニラ麻とも呼ばれ、和紙の原料であるミツマタに似た構造を持ちながら、繊維は驚くほど長く強靭です。製法もユニークで、まずアバカの葉鞘から取り出した繊維を蒸してセルロースを抽出し、上質な紙をつくります。その紙をミリ単位で裁断してテープ状にし、こより状に撚り合わせることで、初めて「紙の糸」が完成するのです。紙は伸びにくく切れやすい性質を持つため、均一な糸に仕上げるには非常に精緻な工程が必要とされています。
アバカから作った紙糸の服は綿の約1/3の軽さで、通気性がよく着心地が良い。
「紙」なのに水洗いできる理由
「紙の服」と聞くと、濡れたら破れてしまいそうな印象を持つ方も多いはず。ですがアバカはもともと船のロープにも使われるほど水に強い繊維で、日本の紙幣にも採用されている素材です。ポケットに入れたままお札を洗濯してしまっても、ボロボロにはならずヨレるだけで済むように、アバカ由来の紙糸も普段の衣服と同じように洗濯機で洗うことができます。原料植物そのものの生育も早く、刈り取ってもすぐに再生するため、森林破壊につながりにくいという特長も持っています。
8つの機能を併せ持つオールシーズン素材
WA.CLOTH®の紙糸には「吸放湿性・消臭性・温度調整・紫外線カット・ドライ感・軽量性・通気性・抗菌性」という8つの機能が備わっているといわれています。糸の内部に空気の層を含むため断熱効果が生まれ、夏はサラッと涼しく、冬はムレを抑えて暖かさをキープ。用途に応じてナイロンやレーヨンなど他の繊維と混撚することで、紙素材と化学繊維それぞれの持ち味を活かしたハイブリッドな生地としても展開されています。
第二章|カポック── 木を伐らずに生まれる「植物のダウン」
木を伐らず、実からわたを採る
カポックは、インドネシアのジャワ島をはじめ東南アジアに広く自生する高さ10〜30mにもなる樹木。実(蒴果)の中に詰まった綿毛のような繊維を採取して使うため、樹木そのものを伐採する必要がありません。栽培には農薬や化学肥料、灌水もほとんど不要で、樹齢70年を超える大木として育ちながら二酸化炭素を吸収し続けるとされています。従来はクッションやぬいぐるみ、救命胴衣の詰めわたとして使われてきましたが、化学繊維の台頭とともに一度はシェアを縮小させていました。
中空率約80%という驚異の軽さ
カポック繊維最大の特徴は、繊維内部がストローのように空洞になっていること。この中空率は約70〜80%と天然繊維の中でも屈指の高さで、重さはコットンのわずか約1/8ほど。この空洞部分が身体から出た水分を吸収し、水蒸気が水に変わる際の凝縮熱で発熱するため、軽いだけでなく羽毛にも劣らない保温力を発揮します。さらに天然の絹のような光沢やぬめり感、弾力性も兼ね備え、洗濯後も潰れにくいという性質も持っています。
カポックは中空構造で綿の約8分の1と軽く、保温性にも優れた天然繊維。
— 繊研新聞
「紡げない繊維」から「服になる繊維」へ
カポック繊維は繊維長が18〜27mmほどと短く、表面が滑りやすいため、長らく「糸に紡ぐのが難しい繊維」とされてきました。単独では衣料に不向きだったカポックですが、近年はシート状に加工する技術や、綿・ポリエステルなどとの混紡技術が進歩したことで、コートやジャケットの中綿として実用化が進んでいます。動物性のダウンを使わない「ヴィーガンダウン」として、アニマルフリーな防寒着を求める人々からも注目を集めている素材です。
2つの素材を比べてみると
どちらも「これまでの素材の弱点を、自然の力で補う」という発想から生まれた繊維ですが、得意分野はまったく異なります。WA.CLOTH®は年間を通して着られる衣類全般に、カポックは防寒アイテムの中綿にと、住み分けがはっきりしているのが面白いところです。
| 素材 | 原料 | 得意な用途 | 軽さ |
|---|---|---|---|
| WA.CLOTH® | アバカ(マニラ麻)由来の紙糸 | ソックス、インナー、シャツ、アウター | コットンの約1/3 |
| カポック | カポックの実の綿毛 | コートやジャケットの中綿、寝具 | コットンの約1/8 |
まとめ
和紙の技術を纏った紙糸「WA.CLOTH®」も、木を伐らずに生まれる綿毛「カポック」も、根っこにあるのは同じ想いのように感じます。既存の素材が抱えていた小さな不便さや矛盾を、自然の仕組みを活かしながら丁寧に解決していくこと。派手さはなくても、こうした素材が少しずつ選択肢として広がっていくことに、これからのファブリックのあり方を感じさせてくれます。
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