6月24日は「グローバル・アップサイクリング・デー」。ものを活かす知恵は、実は日本のはぎれ仕事の中にあった
6月24日に「Global Upcycling Day(グローバル・アップサイクリング・デー)」という日があります。着なくなった服やあまった生地を、ただ処分するのではなく、もう一段階価値のあるものへと作り替える。そんな営みを、世界中で思い出そうという日です。裁縫箱のそばで長く生地と向き合ってきた方なら、この言葉に驚くほど覚えがあるのではないでしょうか。今日は、この記念日の成り立ちと、日本の手仕事の中にずっとあった「アップサイクル的な知恵」を辿ってみたいと思います。
「アップサイクル」という言葉が生まれた日
「アップサイクル」という言葉自体は、実はそれほど古いものではありません。1994年、ドイツの技術者ラインナー・ピルツが、建築資材の再利用を専門とする雑誌「Salvo」の取材の中で語った言葉がきっかけだったと言われています。ピルツは、レンガを砕いて再利用するような従来型のリサイクルを「ダウンサイクル」と呼び、それとは逆に、ものの価値を下げずに、むしろ高めながら生まれ変わらせる考え方を「アップサイクル」と名付けました。
“What we need is upcycling, where old products are given more value, not less.”
「私たちに必要なのはアップサイクルだ。古いものに、今より価値を減らすのではなく、もっと価値を与えることだ」
この考え方が世界的に広まったのは2002年、建築家ウィリアム・マクダナーと化学者マイケル・ブラウンガートによる著書『Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)』がきっかけでした。同じ2002年に、市民への呼びかけとして「アップサイクリング・デー」も生まれ、以来6月24日は世界各地で、ものを作り替える一日として少しずつ根付いてきました。
日本には、すでに「ぼろ」があった
面白いのは、「アップサイクル」という言葉が生まれるずっと前から、日本にはそれとよく似た手仕事の文化があったということです。江戸時代、東北など木綿が育ちにくい寒冷な地域では、一枚の布はとても貴重なものでした。人々は着古した藍染めの木綿を捨てずに、繕い、継ぎ、また繕いを重ねていきました。何世代にもわたって布を重ね継いだその姿は、「ぼろ(ぼろぼろの布)」と呼ばれ、今では一つの染織文化として世界中の美術館やコレクターからも注目を集めています。
「もったいない」という土台
「ぼろ」や、それを補強する刺し子の技法を支えていたのは、「もったいない」という感覚でした。豆を三粒包めるくらいの小さな布さえ、いつか繕いに使えるからと大切にしまっておく。そんな暮らし方の中に、ものの価値を減らさずに次の役目へと渡していく、アップサイクルそのものの発想があったのだと思います。
“Boro’s patchwork aesthetic has inspired sustainable fashion brands and DIY crafters alike.”
「ぼろのパッチワークとしての美しさは、サステナブルなファッションブランドやDIYを楽しむ作り手たちに、今も影響を与え続けている」
— Wetpaint, “The History of Japanese Boro and Sashiko Mending Techniques”
戦後、暮らしが豊かになるにつれて、「ぼろ」は貧しさの記憶として一度は隠されるようになりました。それが今、海外のテキスタイル研究者やクラフト作家たちの手によって、あらためて美しいものとして見出されているのは、少し不思議で、そして少し誇らしい巡り合わせのようにも感じます。
はぎれ箱を、もう一度開けてみる日に
海外の縫い手コミュニティでも、はぎれと向き合う文化はとても身近です。SNSでは「スクラップバスティング(scrap busting)」という言葉が使われ、たまっていくはぎれをどう使い切るかが、季節ごとのちょっとした挑戦として楽しまれています。小さな端切れはポーチの縁取りやコースターに、細長い切れ端は紐にして、そしてキルターにとっては指先ほどの布さえパッチワークの立派な材料になる。サイズも色柄もばらばらな布たちが、一枚の作品の中でだけ出会えるというのも、はぎれ仕事ならではの楽しさだと思います。
6月24日にできる、小さな一歩
・引き出しの奥のはぎれ箱を、一度全部出してみる
・使いみちのなかった布を、コースターやポーチなど小さな形にしてみる
・古いシャツやワンピースを、別の形に仕立て直せないか眺めてみる
・気に入っている「継ぎ接ぎ」のものを、写真に撮って記録に残す
大きなことをする必要はありません。「ぼろ」を繕った人たちがそうであったように、目の前の一枚の布を、少しだけ丁寧に扱ってみる。それだけで、この日の意味は十分に満たされる気がします。
まとめ
「アップサイクル」という言葉が世界に生まれたのは1994年のこと。けれど、ものの価値を減らさずに次の世代へ渡していくという発想そのものは、日本の「ぼろ」や「もったいない」の暮らしの中に、ずっと前からありました。6月24日は、遠い誰かが決めた記念日というより、私たちが元々持っていた知恵を、あらためて思い出すための日なのかもしれません。今日はぜひ、手元のはぎれ箱をそっと開けてみてください。
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